世間から嫉妬され、誰も助けてくれない

「甘やかしていると親ばかり責められますが、世間は助けてくれないし……。犯罪者となった息子でも、親が助けてあげるしかなかったんです」

 淳子(仮名・70代)は美容関連の会社を経営しており、地域では名の知れた人物だった。離婚した夫との間に息子がふたり。長男は問題なく成長したが、次男は高校の頃から薬物に手を染めるようになり、逮捕を繰り返していた。
成人し、逮捕が実名報道されると、淳子のもとには批判も殺到したが、「息子さんの力になりたい」と支援を申し出る人々が寄ってきた。正体は新興宗教や占い師など、目的は金だった。

 高額な費用のセミナーに参加させられたり、本を買わせられたりしたが、息子の再犯は止まらず、淳子は弱みに付け込まれ、騙された経験から社会不信になっていった。

 前科者の次男を雇う会社などないと、周囲の反対を押し切って自分の会社の社員にしていた時期もあった。ところがトラブルを起こすばかりで仕事は長続きせず、40歳を過ぎた次男は4度目の逮捕に至った。

 夫と会社を経営している直子(仮名・60代)の長男もまた、10代から金銭トラブルが絶えず、詐欺罪で逮捕されていた。

「幼い頃からお金をあげていたので、お金で人を支配することを覚えてしまったんです」

 直子と夫は仕事が忙しく、息子に構う時間がない罪悪感から、小遣いを与えすぎていたことを後悔していた。お金は悪い仲間を呼び寄せる。親の目の届かないところで、息子は次々と悪事に手を染めるようになり、20代で初めて逮捕され服役もしたが、出所後も定職に就かず、起業すると言っては家族から多額の援助を受けてきたが、事業が軌道に乗ることは一度としてなかった。