「オバタリアン」もいなくなった

 働き方でいえば1989年ごろ栄養ドリンク『リゲイン』のCMの歌詞から「24時間戦えますか」という言葉も流行した。

「今だと、ワークライフバランスに反するし、ブラック企業に該当するワード。24時間頑張るという価値観ではなく、定時に帰りオフを楽しもうという流れになっていますよね」

 近年では「帰れない」「厳しい」「給与が低い」などの言葉を組み合わせて「新3K」という呼び名もあるとか。

 漫画の『オバタリアン』が発祥で、厚かましい振る舞いをする中年女性を「オバタリアン」と呼んだ時代もあった。

「女性の社会進出も進みましたし、社会との関わり方で非常識な振る舞いをする人は減ったのかもしれません。それに、年齢を重ねても見た目に気を使う人が増えた。主婦の方でも化粧やおしゃれをまったくしない人は少ないのではないでしょうか」

 いくつになっても現役。働き続ける女性が増えたため「オバタリアン」は消滅したのだろう。

『美魔女』という価値観が生まれ、今や藤あや子さんや宮崎美子さんなど60代でも若々しく美しい方は増えています。実際、今の若者にもこの世代をきれいだと思っている人も多いです」

「アッシー」は『パパ活』『港区女子』に変化

「アッシー」「メッシー」「ミツグ君」という言葉。その言い方は違えど、今も似た価値観はあるという。

『パパ活』『港区女子』にかわってきていますね。1980年代に若者だったアッシー世代がいまだに小金を持っていて、『パパ活』で女性にお金を払っていることも。一方で若者は基本的に割り勘主義。“男が全おごり”の文化はなくなってきています」

 ここまで“消えた価値観”について解説してきた原田さんが今の時代に感じることとは何だろうか。

昔は経済成長一辺倒で『お金至上主義』『お金稼いだ人が偉い』という考えだったことが見えてきますね。

 今は、そんな右肩上がりの時代に起こった理不尽を是正していこうという流れだと思います」

はらだ・ようへい マーケティングアナリスト。芝浦工業大学教授。信州大学特任教授、玉川大学非常勤講師。BSテレビ東京番組審議会委員。「さとり世代」「マイルドヤンキー」「伊達マスク」などさまざまな流行語を作った。『Z世代 若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?』(光文社新書)など著書多数

取材・文/竹腰奈生