僕の隣にはいつも「批判」がいた

 そんな長友選手だが、今回の日本代表選出において年齢的な衰えを指摘する容赦ない「長友不要論」にさらされた。しかし長友選手はあえて積極的に記事のコメント欄を見て、自分の財産にしようと闘志を燃やしたのだとか。結果、アジア最終予選のサウジアラビア戦で躍動。不要論を一蹴してみせた。

 インテル時代は、いいプレーをすれば神様のように扱われ、敗戦に直結するプレーをすれば「HARAKIRI(腹切り)」と書かれるなど、メディアだけでなくファンからも賞賛と批判の双方がすさまじかったそう。

《負けた翌日は、ミラノの市内を歩くのが怖かった》

 と、長友選手の著書『[メンタルモンスター]になる。』(幻冬舎)にて語っている。明るい姿を見せている長友選手も、批判や重圧に押しつぶされそうになった過去があるのかもしれない。

 同書にて、

《僕の隣にはいつも「批判」がいた。もう、友達と言えるくらいの存在だ。僕を成長させてくれる「ガソリン」と言ったほうが近いか》

 と批判に対し、ミスをしてしまう未熟な自分をより成長させるためのエネルギーだと語っている。また、

《つらくても、きつくて、苦境にあっても「ポジティブな姿勢を貫く」》

《ポジティブでいると、思わぬ力を、特にここぞという場面で発揮することができる。ポジティブパワーがその人にもたらしてくれるものは、みんなが想像しているよりはるかに大きい》

 と数々の重圧との闘いを経て、「ネガティブをポジティブに変換する術」を身に付けたのだそう。時にはポジティブすぎて引かれることもあるのだとか。

批判やミスの中に、成長のチャンスがある」という信念のもと、今回の発言に至ったのだろう。長友選手にとってワールドカップのメンバー入りは、生きるか死ぬかの決戦だと言う。その熱い思いが裏目に出てしまい、「空気が読めない」などと捉えられてしまうこともあるかもしれない。期待が大きかったぶん、今回の長友選手のポジティブな発言は仇となったのだろう。

 まだまだ興奮冷めやらぬワールドカップ。まもなく始まるスペイン戦、果たして長友選手の予言通り勝利を勝ち取ることができるのか。キックオフまで、世界チームの動きも目が離せない。