「雅子さんのことは僕が全力で一生お守りします」とプロポーズされた陛下ですが、お言葉どおりの行動をとられたのです。当然、オランダ訪問については上皇ご夫妻(当時両陛下)にも相談されたでしょうが「愛する人のために行く」という思いをお伝えしたのだと拝察します。オランダご滞在中の雅子さまは、とてもいい笑顔をしていらっしゃいましたし、それから少しずつ公務のお出ましが増えました。現在の雅子さまのご活躍を導いたのは、陛下の深い愛情なのです。

天皇陛下の優しい心遣い

 絆の強いご一家ですが、交流のある方々に取材すると、必ずと言っていいほど「会話が多いご家族」というお話をお聞きします。いかにコミュニケーションをとられているかは「洋服」でも読み取れます。

 両陛下は公務や式典などに出席される際、必ず陛下のネクタイと雅子さまのスーツの色を合わせていらっしゃるのです。例えば『植樹祭』では緑、『海づくり大会』は水色、『日系人大会』はオレンジ、『伊勢神宮』ご訪問はゴールドなど。愛子さまがいらっしゃる場合も、必ず“リンクコーデ”を意識されています。これは事前に“何色で合わせましょうか”とご家族で話し合われている証拠ですよね。しかも、それぞれの公務に沿われた色を選ばれていて、例えばお花の展示会では花よりも地味な色の洋服を選ばれて、主役を引き立てるように気を遣われているのです。

オランダでのご静養で王室の方々と。雅子さまにとってご体調が上向くきっかけに。平成18(2006)年8月
オランダでのご静養で王室の方々と。雅子さまにとってご体調が上向くきっかけに。平成18(2006)年8月
【独自写真】愛子さま、扇子を持ちながらキレキレのダンスを披露

 雅子さまをいちばん近くで見守っておられる陛下は、本当にお優しい方。印象に残っているのは、雅子さまのハーバード大学時代から交流がある書道家の小川東洲先生のお話です。小川先生と奥さまは北海道に住まわれているのですが、両陛下が公務で北海道を訪れた時に、時間を作ってお会いする機会を設けたそうです。その際、陛下はあえて15分ほど遅れていらっしゃったというのです。先に到着した雅子さまが、小川さん夫婦と気兼ねなくお話しできるような場面をお作りになるためのお気遣いだったと、小川さんは語っておられました。

 もうひとつ、和歌に関するお話もお聞きしたことがあります。皇室では毎年の新年行事である『歌会始』以外にも、上皇上皇后、天皇皇后それぞれのお誕生日に際して事前にお題が決められます。宮内庁の御用掛で歌人の篠弘さんが雅子さまのお誕生日に際し、お題を相談したところ、陛下は「雅子に聞いてから」とおっしゃったそう。雅子さまと意見を交わしてからお題をご一緒に決めるというお優しい部分が垣間見えます。