浮世離れしたイメージがもたらすもの

 今回の独立にあたって「世界への挑戦をずっと支えてくれた」と語っているように、この移籍がハリウッドでの成功にもつながったのだろう。

 では、本気で海外を目指す原動力は何だったのか。

 白血病から復帰したあと、彼は何かにつけて病気を絡めて語られることが苦痛だったという。そのイメージを払拭するため、悪役やコミカルな役もやったが、何よりも有効だったのがハリウッドでの成功だったわけだ。

「白血病の渡辺謙」から「世界のケンワタナベ」へ。この鮮やかなイメチェンが不倫バッシングをも鎮めたといえる。

「グルメ王の渡部」とか「朝ドラ俳優の東出」とかではなかなかこうはいかない。

 日本人なのにハリウッドスターという、ちょっと浮世離れしたイメージが彼に一種の治外法権をもたらしたのである。

 また、娘の不倫を「される側」になってしまったが、最近、フランスへの移住を発表した。これは父に倣い、ワールドワイドな展開によって、人生を切り替えようとしているのではないか。

 とはいえ、不倫バッシングの鎮静化にはもうひとつ、所属していた事務所の力も見逃せない。独立したことで彼に対する業界の扱い方がどう変わるのか、日本人なのにハリウッドスターな男の真価が試されるところだ。

ほうせん・かおる アイドル、二次元、流行歌、ダイエットなど、さまざまなジャンルをテーマに執筆。著書に『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)。