身体を張った商談

 ファーストクラスでご参加の男性2人。お腹の出た中年男性と、背の高いイケメンの20代。20代男性は中年男性にとても気を使っており、添乗員はツアーを利用した会社の重役の現地視察に、いきなり付き添うことになった若手社員あたりなのかと勝手に思っていた。

 3日目、若い女性のツアー客から「あの2人、もう少し控えるよう伝えてもらえませんか」との相談が。中年男性の態度が大きかったのでそのことかと思ったら、中年男性が20代男性に濃厚なボディタッチをしていたり、彼らの泊まっている部屋から「変な声」が聞こえてくるという。

 どうしたものかと思っていたところ、ふと近くに座った20代男性がぼそっと「毎晩、大変なんです」と添乗員に告白してきた。

 周りに他のツアー客がいないことを確認して詳しく事情を聞くと、20代男性は営業マンで、中年男性は取引先の社長とのこと。その社長に気に入られたそうで、今回のファーストクラスでの旅行で“商談をしよう”と誘われ、同行したのだという。

 旅費は中年男性が支払ったこともあり、営業成績のために身体を張った接待の一大決心をしたのだとか。その後の商談が成功したかどうかは定かではないが、男性が添乗員に話した2人の関係設定自体“プレー”だったのかもしれない……。

「いつも1人で参加しています♪」

 ビジネスクラスでご参加の50代の優雅なマダム。夫が多忙のため、いつも1人で参加していると他のメンバーにも自己紹介をしていた。

 今回彼女が参加したのは、中東の某国内をバスで巡る7泊9日のツアーで、日本人添乗員とその国のライセンスガイドが同行。ライセンスガイドがいないと観光ができないため通常とは違いガイドが2人体制であり、かつ40人ほどの大ツアーだった。

 ツアー客が旅行に慣れてきた4日目のこと。前出のマダムがどうやら行く先々で男性に熱い視線を送っていることに気がついた。ライセンスガイドも「あの1人参加の女性、いろんなところで色目を使っている」と添乗員にチクリ。その日のホテルでの夕食中にも、担当のウエーターへなにやらアイコンタクトをしていたマダム。

 翌朝、朝食前にライセンスガイドがあきれたように報告をしてきた。確認のため朝食会場へ行ったところ、くだんのウエーターがスタッフたちに、マダムと一夜を共にし、どんなことをしたか、いくらもらったかなどを大声で饒舌に語っていたという。

 その後、悠然と朝食会場に現れたマダムはウエーターを見つけると笑顔で手を振った。その様子を素知らぬ顔でチラ見するホテルスタッフたち……。

 なおそのマダムが、次のホテルでもホテルスタッフを品定めするように見ていたのは言うまでもない。

 復路の空港でマダムに「どこの国の男性がすてきかしら?」と、次の渡航先を相談されたが、責任が取れないので言葉を濁した添乗員だった。