2021年12月、Aさんは気持ちの糸が切れてしまう。

「今まで頑張ってきたのに、なんでこんな嫌なことを言われなきゃいけないのか、わからなくなって……。それで、メルカリで商品を購入した後に“もう限界です。全部、暴露します”と連絡しました」

 すると《伝えたいことがあるなら電話してほしい》と返事があったため、Aさんは小林に電話をする。

「彼は“暴露されても別にいい”と言いつつ、“プレゼントをずっと持っているのは無理”とか“服の代わりに送った化粧水は本当に自分で買った”と話していました。2時間ほど話して、私は自分の気持ちを伝えましたが、あまり聞いてもらえず……」

 とはいえ“推し”のアイドルと直接話せて、少しは自分の思いを伝えられたこともあり、いったんは溜飲を下げる。

「小林には、クリスマスプレゼントに8万円するディオールのお皿と“自分の中で気持ちを整理します”という内容の手紙を書いて、美容室に渡してもらうようお願いしました。それから連絡していなかったのですが、その年の12月31日、小林から“生きてる心地がしない”とメルカリでメッセージが送られてきました」

 当時、まだ公にはなっていなかったが、小林は2か月前に万引き事件を起こして、警察に連行されたばかり。自分の過ちが、さらに暴露されてしまうかもしれない。そんな恐怖と小林も戦っていたのかもしれない。再び、ふたりは電話でやりとりする。

「小林は半泣きで“どうしたら許してくれますか?”と聞いてきました。“手紙に、許しますと言えなかったと書いてあったが、言うこと聞けないなら、お前の人生を終わらすからなと言っている人に思えてしまう。とにかく怖い”と言うんです。悲しかった……」

 Aさんは、小林が繰り返すプレゼント転売の事実を誰にも話さず胸に秘め、他人に発覚されるのも防ぐために自ら購入し、小林を守ってきたつもりだった。

「それが怖いって……。ただ彼を応援したい、好きって思わせてくれればよかっただけなのに。彼に怖いという感情を持たせてしまったのなら、私は、ごく普通のファンに戻るべきだと思いました」

 冒頭の会話を終えた後、ふたりは個別に連絡をとるわけでもない、“ごく普通”のアイドルとファンの関係に戻っていく。しかし、心にポッカリと穴が開いたAさんは心身に不調をきたす。

「不眠症になって、1~2時間ほど眠れればいい状態で、最終的に勤め先を退職しました。でも、小林の万引きが発覚したとき、彼はまだメルカリで『ライスフォース』の化粧品を売っていたので、それは全部、買ってあげました。週刊誌にでもバレたら大変だと思ったからです。そのとき小林からは“今回だけは甘えます”とメッセージが来ました。それが最後のやりとりです」

 パティシエとして新たな道を歩むなら、頑張ってほしい。そう思っていたのだが……、

「夏にはうつ病と診断され、療養生活になりました。少しずつ回復していたのですが、昨年12月に一気に体調が悪化して。自分でも気づいてなかったのですが、小林との出来事が、私にとってはそうとうなショックだったようで……」