コラボ側が領収書を「提出拒否」した理由

バスカフェの継続を求める文書を東京都に提出した仁藤さん。都は安全確保を理由に休止の検討を求めていた
バスカフェの継続を求める文書を東京都に提出した仁藤さん。都は安全確保を理由に休止の検討を求めていた
【写真】少女たちに無償で下着、避妊具、生理用品などを提供するバスカフェ

 一方で一部領収書をコラボ側が「提出拒否」したことから、都は「改善」を指示した。これについて弁護団は次のように反論する。

「相談に訪れるための交通費等を女性たちに渡した際に受け取った領収書には、当然ながらその女性の名前や住所などが記載されている。これは絶対に外に出すことはできない情報。“行政から求められたらあなたの情報を開示することになる”と女性たちに説明することになれば、支援活動は成り立ちません」(神原弁護士)

 実は、コラボ側は再調査に当たり、領収書の原本を都に提示している。少女たちのプライバシーを守るため、具体的な氏名などを開示しなかったにすぎないのだ。

 結論から言えば、神原弁護士が断じたように、「不法」「不正」は何ひとつ認められていない。委託費の返還も求められていない。それでも誹謗中傷は止まらないのだ。妨害行為もやむ気配がない。

 そうしたことから弁護団は、妨害者の一部を特定、接近禁止を求める仮処分を申し立て、東京地裁は3月14日、妨害者がコラボの活動場所や事務所へ立ち入ることを禁じる決定をした。しかし─。

本当に、次から次へと問題が持ち込まれる」と、仁藤さんも思わずため息を漏らすような事態が持ち上がった。コラボに事業を委託している都が、妨害が相次いでいることを踏まえ、安全性に問題があるとして「活動の再考」を求めてきたのだ。事実上の活動中止要請である。実際、3月22日の「バスカフェ」活動は中止に追い込まれた。つまり、都は妨害者に“成功体験”を与えたことになる。

 なぜ被害を受けている側が「再考」しなければならないのか。そもそも、街頭での若年女性支援は行政ができないからこそ、コラボに委託したものだ。責任を果たすべきは委託元の都のほうではないか。

 ねえ、仁藤さん。そう思いません? 私が同意を求めると、ため息を漏らしたばかりの仁藤さん、なぜかいつもの笑顔に戻っている。

「私たちは、女の子たちは支援の対象ではなく、共に声を上げていく仲間だと思っています。そうした関係を続けることができるのであれば、さまざまな可能性はあるはず」

 たぶん、この人は一歩も二歩も先を見ている。これまでだって、直観と行動力で勝負してきたのだ。

 あるとき、妨害行為が相次ぐ「バスカフェ」の前で仁藤さんに訊ねたことがある。

─めげてません?

「全然」

─本当に?

「そりゃあ、嫌なことありますよ。昨夜もネットの書き込み見て落ち込んだけど、音楽かけながら踊ったらすっきりした(笑)。だから大丈夫。簡単には屈しない」
─うん、そうですよね。

「そうだよ、私、悪くないもん」

 それが自身を奮い立たせるためのファイティングポーズなのか、本当の強さなのか、私にはわからない。だが明確なのは、この人は「負けない」ということだ。転んでもただでは起きない。たぶん、そうやって生きてきた。