そう聞くと、やはり恐ろしいと感じる人もいるだろうが、早合点しないでほしい。翌々月末までに届出がないと「割増金を請求することができる」のであって、届出がないと即請求とはならない。「個別事情を総合勘案しながら適用していく」そうなので、遅れている理由を釈明することはできるだろう。またそもそものNHKの基本姿勢を「受信料の意義をご理解いただき納得してお手続きやお支払いをいただくという、これまでのNHKの方針に変わりはありません」とあらためて打ち出している(こうした考え方は2022年10月11日付の「『日本放送協会放送受信規約』の一部変更について」が整理されていてわかりやすい)。

 これだけ言っておいて「はい、期限過ぎました。即、割増金です! 2倍です!」とはならないだろう。検討分科会でも、有識者の皆さんが「公共放送としての基本姿勢」を守るようにと確認しながら進めているので、「いきなり2倍」とはならないはずだ。

訪問に頼らず「公共放送の受信料徴収」は可能?

 さらにここからは私見だが、訪問に頼らずに「公共放送の受信料」のような概念的な料金を徴収できるのか、大いに疑問を感じている。305億円もかかっていたというが、7000億円の売り上げを稼ぐ民間企業の場合、営業部門はかなりの人員数になるはずだし、広告宣伝費や販売促進費は300億円では済まないだろう。7000億円の受信料収入を得るのに、1割程度の営業経費がかかるのは仕方ないのではないか。

 先述の料金徴収についての基本姿勢を保ちながら受信料を契約してもらうには、訪問要員が一軒一軒のお宅を回ってテレビのアンテナがあることなどを確認して「ごめんくださーい」と訪問することが必須だったのではないか。「そもそも公共放送というのは」とか「受信料はNHKを見る対価ではなく」などわかりにくい理屈を説明する“人間”が介在する必要があると私は思う。

 実は私は数年前になぜかNHKのある地方局の依頼で、訪問要員(会社として請け負うところもあった)の皆さんの前でNHKの置かれている状況を講演したことがある。正直私も、NHKの訪問要員トラブルの例も聞いていたので、荒っぽい人もいるのではと懸念したが、みなさん真面目そうな人たちばかりで熱心に話を聞いてくれた。何人かは残って質問に来たりもした。訪問先で説明する題材にしたかったのだと思う。なるほどなと思った。NHKの受信料というわかりにくいお金を払ってもらうには誠実さ、真面目さが必要なんだなと納得したのだ。トラブルも一部にはあるが、大半は真面目な人たちなのだろうと感じた。