「彼ならやりそう」パワハラ気質のあったX氏

「私も過去にX氏と一緒に働いていたことがあったので、話を聞いて“彼ならやりそうだ”と納得しました。以前から“パワハラを受けた”と言っている隊員がいたので、その人たちに聞き取りをしてみたんです」(Aさん)

 パワハラ被害を口にしていた隊員に事情を聞くと、不条理な話が次々に飛び出した。

「C子さんは、通常では8時からの勤務のところを、X氏の独断で“若手は7時15分までに出勤しなさい”と命じられていました。確かに以前は、海上自衛隊のそういった慣習もありましたが、今は完全になくなったはずです。自宅から職場の横須賀まで距離があり、家庭もあるC子さんには指定時間の出勤は難しかった。いつも7時20分ごろに出勤していたそうなのですが、それがX氏は気に食わなかったのです。彼女に“君は歳はいってるけど階級が低いんだから、若い子と同じように時間までに来い!”と怒鳴りつけたらしいんです。“そんな制度はありません”と反論しても認めてくれなかったと」(Aさん)

 同じく、女性隊員のD子さんに対してのハラスメントもあったという。

「D子さんは、旦那さんも自衛官で、幼稚園に通うお子さんが2人います。あるとき、旦那さんの転勤が決まり、子育てをひとりで抱えた彼女は、泊まり込みでの業務には立てなくなってしまいました。一時的に泊まり込みを免除してもらう申請をしようとしたところ、X氏は“甘えている”と激昂。“お前は全然仕事ができないのに、免除とは何事だ”と……。最終的には、“年始の休みで泊まり込み業務に入るなら、今後の免除申請を受け付けてやる”ということになりました。D子さんにとっては、単身赴任する旦那さんと、家族で一緒に過ごせると楽しみにしていた年末年始。お互いの実家へ行くために飛行機のチケットも取っていましたが、全てキャンセルし、業務に入ることで、ようやく泊まり込み免除の申請を受け付けてもらえたそうです」(Aさん)

被害を受けた女性がAさんに渡したメモ。被害の詳細が綴られている(Aさん提供)
被害を受けた女性がAさんに渡したメモ。被害の詳細が綴られている(Aさん提供)
「お前はすぐに男に股を開く」パワハラ自衛官はセクハラもしていた!

 被害として提出はしていないが、セクハラを受けた女性もいたという。

「X氏に根拠なく“お前はすぐに股を開く”と言われたという方もいたんです。ひどい話ですが、彼女はこの件に関しては、“自分で上司に報告に行く”とのことだったため、今回告発した被害者のなかには含みませんでしたが……」(Aさん)

 これだけのパワハラ被害を聞いたことで、危機感を抱いたAさんは告発をすることに。

「ハラスメントの申告書を提出するため、私が被害者たちの話をとりまとめました。被害の内容を書いてもらい、みんなで一緒に文章を考えましたね。ニュアンスや書き方についても被害者本人に確認を取って、“やっぱり表現を変えたい”と言った隊員には自分で書いてもらいました。申請の前には、被害者3人からそれぞれサインと印鑑をもらい、全員が納得した状態で文章を作ったのです」(Aさん)