【1】男性の病気と思われていて女性患者の診断が遅れる

【2】女性のほうが男性より明らかに病気にかかるリスクが高いのに、考慮されていない

 1は動脈硬化を基盤とする病気で、心筋梗塞、狭心症、大動脈解離など。

「動脈硬化によって引き起こされる病気は、男性の場合、若いころからその危険を伴い、死に至ることも珍しくありません。

 対して女性女性ホルモンが動脈硬化の進展を抑制するので閉経前にかかることは非常にまれです。ところが閉経後から急増し、高齢になるにしたがい動脈硬化を基盤とする病気のリスクが高まっていく。

 この違いを認識していないと、診断の遅れをもたらすわけです。先の健診データにも、動脈硬化を招くコレステロール値の性差がよく表れていますよね」

 男女で病気の症状が異なる要素も加わるという。

「例えば、心筋梗塞の代表的な症状は胸のしめつけです。男性の場合、胸の中央が痛くなるので病気を早く発見しやすいですが、女性は歯や背中、お腹などが痛み、心筋梗塞にたどり着くまでに時間を費やすことが多くなります」

 2は骨粗鬆症、甲状腺疾患(橋本病、バセドー病)、慢性疲労症候群など。

「骨粗鬆症や甲状腺疾患は圧倒的に女性の患者さんが多いにもかかわらず、健診の項目に入っていないため、早期発見を逃してしまいます。慢性疲労症候群も女性に多いのですが、病気としてほとんど知られていませんでした。新型コロナの後遺症の最たるものとして有名になり、やっと認知されるようになったのです」

血管が原因の病気をストレス性の病と誤診

 天野先生が性差医療、女性外来の普及に駆り立てられたのには、自らの体験も深く関係している。

「私が40代のときです。治まらない胸の痛みに悩む同世代の女性患者を診察しました。しかし心臓の検査をあれこれしても異常なし。他の病院では心臓神経症で片づけられていました。

 そんなときにアメリカの性差医療に出会い、更年期前後の女性に『微小血管狭心症』が多いことや有効な薬を知り、患者の不安と悩みを解消してあげられた。

 女性へのきめ細かな診察や正しい知識がないために、血管の病気を精神的なストレスによる病と誤診して、患者が長い間苦しんでいたのです」

 その後、50代となり、今度は自らが重い更年期障害に悩まされることに。

「痺れ、全身痛、肌荒れなどの症状に襲われました。他の医師に相談してもいっこうに改善されず、今度は欧米の論文にも答えはなかった。ならば、同様の悩みを抱える女性のためにも自分で解決するしかないと思い、女性外来の創設に至りました」