女性外来の必要性

 性差に応じた医療は少しずつ認知されてきたものの、いまだ広く浸透しているとは言い難い。

女性外来を長年やっていてわかったことは、病名のつかない患者さんが多いこと。他の病院で“不定愁訴”(原因を特定できない不調)とされ、女性外来を訪ねて来られる例は少なくありません」

 病院ではどうしても“命に関わる病気かどうか”を重くみるため、“病名のつかない不調”の患者は親身になってもらえないケースも多い。

「一般の外来の医師は多くが男性のため、女性特有の病気の悩みを十分理解してくれません。加えて、臓器別診療の弊害で、診断のつかない患者さんはたらい回しにされてしまう問題もある。わかってもらえず、聞く耳も持ってもらえないことから、不満を募らせるのです」

 女性外来はこうした患者の訴えに耳を傾け、心身共に総合的に診る役割を担っている。女性特有の身体的・精神的な悩みを聞き、アドバイスを行うのだ。

「問診には30分かけてじっくり患者さんの話を聞く、患者さんは分野問わずどんな症状を訴えてもいいなど、女性患者が求めるニーズに対応します。

 対話プラス性差医療の知識を合わせることで、解決策を見つけられる症例が多いです。また、効果が上がらないときには専門医を紹介する入り口としての役割もあります」

 天野先生が創設したNPO法人性差医療情報ネットワークのホームページ(下記)では、全国にある女性外来を地域別に検索できる。

女性外来では性差を踏まえ、幅広い年代の女性の健康相談と治療にあたります。真摯に患者さんの訴えに耳を傾け、適切なアドバイスを受けられるはずです。かかりつけ医にできる女性外来を見つけて、お付き合いいただくのが望ましいですね」

見逃されやすい病気6
【1】男性の病気だと思われている
心筋梗塞、狭心症、大動脈解離
【2】女性のほうがリスクが高いのに考慮されない
骨粗鬆症、甲状腺疾患、慢性疲労症候群

教えてくれたのは……天野惠子先生●静風荘病院で女性内科・女性外来を担う。東京大学医学部卒業。NPO法人性差医療情報ネットワーク、性差医療・医学研究会(現・日本性差医学・医療学会)を創設。女性外来オンラインも開設する。

性差医療情報ネットワーク http://www.nahw.or.jp/

(取材・文/百瀬康司)