では、大学の数は今後、減るのだろうか?

「そうとも言い切れません。看護・医療系やIT系などニーズが高い分野では今後も新設が続くことが見込まれます。また職場で即戦力となりうる人材育成を目指す専門職大学というカテゴリーも2019年4月に誕生。今後、専門職大学に転換する専門学校が増えるでしょう。これらも含めると、大学数が1000校を超える可能性も十分にあります」

“大学進学率”は上昇中

 少子化が進む状況で、大学数が増えれば、生き残りはさらに厳しくなるのでは?

「これも単純にそうなるとは言い切れません。例えば現在の日本社会ではさまざまな場面で、パソコンやタブレットなど情報機器が使用されています。こうした高度化・情報化に対応できる人材を生み出すには、大学進学が必須。高収入を得るために大学進学を選択する学生はますます増えていくと考えられます」

 実際、大学進学率は飛躍的に伸びている。

「文部科学省の『学校基本調査』によると、1991年の大学進学率は25・5%。それが2022年には56・6%と約30年で倍増しました。この増加に大きく関わっているのが、女子の大学進学率の上昇。1991年の女子の大学進学率はわずか16・1%でしたが、2022年には53・4%と約3倍に跳ね上がっています」

今年、小倉優子が入学した白百合女子大学。石渡さんは「2022年の定員充足率は76.6%と危険水域ではないものの、今後も現状維持するのは難しいのでは」と話す(画像は公式サイトより)
今年、小倉優子が入学した白百合女子大学。石渡さんは「2022年の定員充足率は76.6%と危険水域ではないものの、今後も現状維持するのは難しいのでは」と話す(画像は公式サイトより)
【写真】白百合女子大学に入学した小倉優子、大学受験直後のお疲れショット

 ただし、地方部に関しては女子の進学率はいまだに低い。

「東京では女子の大学進学率は75・8%。一方、全国最低の秋田では37・4%とほぼ2倍の差があります。しかし、社会の高度化・情報化は全国どこも同じですから、今後は地方在住の女子の進学率も上昇すると考えられます」

 その結果、大学進学率が上がれば、私立大が生き残る可能性はより高まる。

「ただし女子大に関しては、女子高生の共学志向の高まりなどで苦境に立たされる大学が出ることが予想されます。小規模校で充足率も低めの恵泉女学園と似た状況にある岐阜女子、名古屋柳城女子、大阪女学院、神戸海星女子学院、松山東雲女子の5校は危険水域にあるといっていいでしょう」

 ちなみに小倉優子が進学した白百合女子大学は?

「データを見ると、安全とも危険ともいえない中間層に属しています。ただし、現状維持で生き残れるかというと、可能性は低め。キャリア志向に対応できる学部の新設や共学化など、何らかの改革を行う必要性があると思います」

 大学選びはつい偏差値に目が行きがちだが、立地、充足率、学部数を参考に将来性に注視する必要がありそうだ。

【追記】 4月17日、神戸海星女子学院大学は2024年度以降の学生募集停止を発表した(2023年4月19日10時40分修正)。

教えてくれたのは……

石渡嶺司さん●大学ジャーナリスト。専門は大学を含む教育、就職、キャリアなど。就活、高校生の進路をテーマにした講演も行う。著書は『改訂版 大学の学科図鑑』(ソフトバンククリエイティブ)、『ゼロから始める 就活まるごとガイド2025年度版』(講談社)など多数。

(取材・文/中西美紀)