目次
Page 1
ー 関係者が指摘する“矛盾点”
Page 2
ー なぜ説明に齟齬が生じたのか
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ー 専門家の見解
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ー 『消えた銃弾』の答え

 和歌山県の漁港を選挙応援のため訪れていた岸田文雄首相を狙い、爆発物が投げ込まれる事件が発生したのは、4月15日のこと。

 威力業務妨害の疑いで現行犯逮捕された男は、木村隆二容疑者(24)。

「木村容疑者は昨年行われた参議院選挙で立候補できず精神的苦痛を受けたとして、国を相手に損害賠償請求を求める裁判を起こしていました。立候補するには300万円の供託金が必要になるのですが、その金を用意できなかった。これが事件の動機と関連しているのではないかと見られています」(全国紙社会部記者)

 幸いなことに死者や重傷者は出なかったが、事件を巡り、ある“疑惑”が持ち上がる。

「事件直後に各マスコミが行った岸田政権の支持率調査が発表されたのですが、多くの調査で先月よりも支持率が上昇していたのです。この結果が不自然だとして“岸田首相襲撃事件は自作自演”だとする陰謀論が、SNSを中心に語られているのです」(WEBメディア編集者)

関係者が指摘する“矛盾点”

 こうした“陰謀論”は、昨年7月に発生した安倍晋三元首相の暗殺事件直後も噴出していた。

「暗殺事件は“安倍元首相が総理大臣に返り咲くための自作自演だ”とするデマがSNSなどで拡散されました。ほかにも聴衆の中に犯行に加担している人がいたのではないかといった話や人種差別的な投稿も見受けられました」(同・WEBメディア編集者)

 ありもしないデマが拡散されたが、この事件についてさまざまな“矛盾点”があると声をあげる人物がいる。

「自作自演なワケがない。誰が好んで殺されるのでしょう」

 そう話すのは安倍元首相を師と仰ぐ自民党の高鳥修一衆議院議員だ。

「私が話すことは決して陰謀論ではありません。この事件には辻褄の合わないところがいくつもあるのです」(高鳥議員)

 その“矛盾点”を説明する前に、まずは事件について振り返りたい。

 事件は'22年7月8日の午前11時半ごろ、近鉄大和西大寺駅前の路上で安倍元首相の街頭演説中に発生した。背後から近づいた山上徹也被告が安倍元首相に向けて2度発砲。このとき撃った弾丸が安倍氏を直撃したのだ。

「銃撃から約50分後に奈良県立医科大学附属病院に運ばれ緊急手術が行われましたが、同日午後5時3分に死亡が確認されました。その後、大学病院は安倍氏の受けた傷について説明する会見を行いました。そこで救命医は“首には2か所の銃創があった。おそらく首の付け根の右前(=右前頸部)から体内に入った弾丸が心臓に穴をあけ致命傷となった。左上腕部には射出口が認められた”と説明をしたのです」(前出・社会部記者)

 しかし、同大学病院で行われた司法解剖の結果は、まったく違う内容だった。

「解剖結果では、左上腕部から体内に入った弾丸が左右の鎖骨下動脈を傷つけ失血死に至る致命傷を与えた。首には2か所の銃創があり、1か所は銃弾による傷だが、もう1か所は原因を特定できなかったと発表されたのです」(同・社会部記者)