目次
Page 1
ー 「不安よりもワクワク感の方が大きかった」
Page 2
ー 「生きてる」の概念

「タレント」「歌手」というかつての肩書や経歴を捨てて第2の人生を選んだ元芸能人たち。まったく異なった世界へ飛び込んだ彼、彼女らを待っていたのは芸能界以上に厳しい「現実」、そして想像以上の「やりがい」だった―。人気ボーカル&パフォーマーから畑仕事をして農ライフを実践中の武藤千春さんにインタビュー!

 日本を代表するガールズグループで16歳から4年間、活躍してきた武藤千春さん。紅白や武道館ライブなどでのコンサートも経験し、第一線で活躍してきた。子どものころから好奇心が旺盛。とにかく何でもやりたいと思う気持ちが強かったそうで、アーティストもその内のひとつだった。

「不安よりもワクワク感の方が大きかった」

「運が良かったというか、オーディションに受かって、そのまま走り出しました。最高の環境の中で、パフォーマンスを続けられたことは何物にも代えがたい経験でした。ただ、10代も終わりのころにふっと思ったんです。アルバイトをしたこともなく、同世代の子はいろいろと経験しながら社会人になっていくけれど、私はちゃんとした社会人になれるのかなって」(武藤さん、以下同)

 そう思う背景には、アーティストとしての自分に不安があったから。

「今は最高のパフォーマンスを提供できるけれど、30代、40代、50代になった自分は、このクオリティーを提供するのは無理とわかってしまったんです。限界が見えてしまった。だったら、一直線に突き進むのではなく、もうちょっと新しい自分の可能性も見つけようと思ったわけです」

 そして、卒業を決意。しかしまだ19歳、早くにやめてしまうのは惜しくなかったのか。

「ファンの方がいてくださる間に、何か直接関わりが持てるようなことがしたかった。洋服が好きでお店に勤めようかとも考えたけれど、だったら自分でブランドを立ち上げるのも面白いかなって」

 後ろは振り向かない。今、面白そうだなって感じたことをとにかくやってみる。

「新しいことを始めて新しい景色が見られる、そのワクワク感が不安より大きい。それに、やってみて、もし自分に向いていなかったら、またやり直せばいい。できなかった、ダメだったというのも自分の新たな発見です」