動物に尽くすことが自分の人生の使命

「この子は東日本大震災のとき、被災地から迎えた猫です」膝にいる月子
「この子は東日本大震災のとき、被災地から迎えた猫です」膝にいる月子
【写真】京都でモデルの仕事を始めた頃の杉本彩が美しすぎる

 動物愛護活動を始めたのは独立して間もない20代半ばのころだ。撮影所で猫風邪をこじらせた子猫を保護したのがきっかけだ。

「ああ、このままじゃ死んでしまうと思って。動物病院から退院後、自宅で保護していました。私にすごく懐いていたんですが、すでに猫が2匹いたので、自分の感情を優先して3匹目を迎えるのはよくないと思ったんです。その猫の幸せを第一に考えるべきだと、号泣しながら里親さんに託しました」

 ある日、仕事先に向かって車で移動していたときのこと。ふと目を覚ますと猫が道端に倒れているのが見えた。周りに人はいるが、みんな遠巻きに見ているだけだ。

「車を止めて!」

 杉本はバスローブを手に駆け寄ると、交通事故にあった血まみれの猫を抱き上げた。

「眼球が飛び出た悲惨な状況なのに、抱かれるのを嫌がった猫の爪が私の顔に刺さって、私も流血しちゃって(笑)。仕事か猫の命か。もう、ギャラがもらえなくてもいいやと思って、猫を助けたんです」

 1度に多数の猫を預かったこともある。東日本大震災で飼い主とはぐれた猫6匹を保護した宮城県の人から「助けてほしい」と電話がかかってきたのだ。

 現地に行くと動物愛護センターに、身動きするのも困難なほど小さなケージに収容された大柄な猫がおり、気の毒になって引き取った。保護した7匹のうち半分はメスでみんな妊娠していた。出産させてから里親を探すことになり、生まれた子猫と親猫で事務所と自宅が保護シェルターのようになったという。

 こうした保護活動を続けるうちに、目の前の命を助けるだけでなく、問題の根源を解決しないとダメだと痛感。2014年に一般財団法人『動物環境・福祉協会Eva』を設立し、翌年、公益財団法人として認定された。

縞模様の猫は2年前に家族に迎えたクロ。大あくびで愛らしい姿を見せる
縞模様の猫は2年前に家族に迎えたクロ。大あくびで愛らしい姿を見せる

 杉本は理事長に就任し、ペットビジネスの問題点や犬や猫が殺処分されている現状を講演や著書、SNSなどで発信。動物愛護の普及啓発活動を精力的に行っている。

「もちろん芸能活動にはマイナスですよ。動物をぞんざいに扱うテレビ番組には抗議しますから、面倒くさいと思われるし。動物虐待事件が起こると顔出しで刑事告発もしているので、脅しの電話がかかってきたりするし、リスキーなことは確かですね」

 それでも動物愛護活動をやめるつもりはないと、毅然とした口調で言う。

「こうと決めたことは腹をくくってとことんまでやることが大切だと、映画『花と蛇』のときにも学びましたから。それに動物に尽くすことが自分の人生の使命のように感じています。メンタルも鍛えられているという実感があり、この活動が自分を成長させてくれていることは確かですね。それまで家族に費やしていたエネルギーを動物の活動に全部シフトできている感じがするので、母や妹との関係性が崩壊したことも、必要な経験だったんじゃないかとさえ思っているんですよ」

 そう言い切ると、少し表情を緩めて続けた。

「たぶん、私はあんまり人間が好きじゃないんだと思う(笑)。ただ、この活動は人と関わらざるを得ないんです。全部人間が引き起こしている問題なので、人間は苦手とか言ってる場合じゃないですよね(笑)」