自分と対照的でちょうどいい彼の存在

「自然な笑いジワができて、年齢とともに緩やかに変化していくことを味わいだと考えている」。年齢を重ねることはマイナスではないと話す杉本彩(撮影/山田智絵)
「自然な笑いジワができて、年齢とともに緩やかに変化していくことを味わいだと考えている」。年齢を重ねることはマイナスではないと話す杉本彩(撮影/山田智絵)
【写真】京都でモデルの仕事を始めた頃の杉本彩が美しすぎる

 2011年に松山さんと再婚して拠点を京都に戻した。自宅には数年前まで犬が3頭、猫が9匹いたが、順番に看取り、今は6匹の猫がいる。すべて高齢の保護猫だ。早朝から餌やりや猫のトイレ掃除などに追われるが、杉本はむしろ楽しそうだ。

「本当に自分の子どもみたいです。子どもでありながら、師匠のように感じることもある。高齢猫って、常に人のことを観察して先を読むし、私よりはるかに生き物としてすぐれているなと思うことがあります(笑)」

 母や妹と絶縁した今は夫の松山さんが唯一の家族だ。父とは20代の終わりに再会して交流をしていたが、3年前に亡くなった。

 松山さんは個人事務所の社長を務め、杉本の活動を全面的に支えている。2人のときはどんな様子なのか聞くと、こう教えてくれた。

「僕は彩のことを世界一きれいな人だと思っているけど、中身はホンマにおっさんなんです(笑)。だから『親方』って呼んでいるんです、家で。『親方、どうする今日?』とか言うと、彩も笑っていますよ。はい」

 まるで漫才コンビのようだと感想をもらすと、松山さんはうれしそうにつけ加える。

「冗談で『一緒にM―1出よか? 吉本の力、使って出れんで』と言うと、『アホか。そういうのいっちゃん嫌いやねん』と怒られるんです(笑)。でも、2人でやったらホンマに面白いと思うんですよ。前代未聞でしょ。いっつも、こんなやりとりしてますよ」

 根っから明るい人なのだろう。そんな松山さんの「バカがつくくらい純粋なところ」に惹かれたと、杉本も笑いながら話す。

「私は完璧主義なところがあって、ものすごく細かいことが気になるし、自律神経を病んで過呼吸になったこともあります。結構しんどかったりするけど、彼はものすごい適当なんですよ。ああ、人ってこんな感じでも、大丈夫なんだーと(笑)。めちゃめちゃ子どもっぽくて、思ったこともすぐ口に出す。私とあまりにも対照的で、ちょうどいいんですかね。彼といると脱力できるところはありますね」

 現在54歳の杉本。50歳を過ぎたころから、「自分も穏やかな気持ちになれるんだ」と実感できるようになった。身体の中から健康になるため食べるものにはこだわっているが、年を取ることに過剰な恐怖心は抱いていない。むしろ、成熟した美しさがあると思っているそうだ。

 これからの目標を聞くと少し考えて、こう答えた。

「本当に自分がやりたいものを作っていくということを、そろそろやらなくてはいけないなと思っています。大人の恋愛映画とか、ヒューマンなテーマの作品とか、自分が見たい作品を作るという感覚が大切なのかなと。私の場合、芸能の仕事は待っているだけじゃできないから(笑)。そこは強調しますけど。フフッ」

 若き日の挑発的な姿もカッコよかったが、自然体の杉本彩が成熟した大人のカッコよさをどんなふうに見せてくれるのか、楽しみだ。

<取材・文/萩原絹代>

はぎわら・きぬよ 大学卒業後、週刊誌の記者を経て、フリーのライターになる。'90年に渡米してニューヨークのビジュアルアート大学を卒業。帰国後は社会問題、教育、育児などをテーマに、週刊誌や月刊誌に寄稿。著書に『死ぬまで一人』がある。