目次
Page 1
ー 歩数だけでは不十分“速さ”にも着目を ー 「毎日1万歩」で免疫力が低下!?
Page 2
ー ウォーキングは朝にやってはいけない
Page 3
ー 先生本人も実践! 血圧・血糖値が正常に ー 健康寿命を延ばす正しい歩き方

 東京都健康長寿医療センターの青柳幸利先生は、2000年から、自身の出身地である群馬県中之条町に住む65歳以上の住民5000人を対象に、「中之条研究」を20年以上続けている。

歩数だけでは不十分“速さ”にも着目を

 日常の活動と病気予防の関係を探る調査研究で、対象の住民全員が365日、「身体活動計」を腰に装着している。

「このデータを分析してみると、1日7000〜8000歩が、高血圧症や糖尿病などのさまざまな病気を予防できるピークで、それ以上歩いても大きな効果がないことがわかりました。さらに、1日20分間の『中強度の運動』を組み込むことで、万病が予防できるということも判明したのです」(青柳先生、以下同)

 例えば、散歩を「中強度の運動」にするには、「なんとか会話ができる程度の速歩き」をする必要がある。

 つまり、ただダラダラと歩いている程度ではダメで、速く歩くことで身体に負荷をかけることが大切だということ。骨密度や筋肉量を増やすには“刺激”が肝心なのだ。

「和歌山県や静岡県でも健康づくりの指導をしているのですが、興味深いことがわかりました。

 みかん農家さんは8000歩以上歩いているのに、高血圧の方が多いんです。調べてみたところ、『中強度の運動』はほとんどゼロ。それが高血圧になりやすい原因だと考えています」

 青柳先生の研究によれば、1日1万歩歩いていても、運動強度が低くて骨粗鬆症になったと考えられるケースもあったという。

 また、別のケースでは毎朝、1万歩を目標に愛犬の散歩に行っていた70代の男性が、うつ病を発症した。

「実はこの方、散歩以外の時間はソファでダラダラ過ごしていたようです。つまり、日常の身体活動が不十分だったと考えられ、一度にたくさん歩いても、健康をキープできるというわけではないということが言えると思います」

「毎日1万歩」で免疫力が低下!?

 激しい運動ができれば健康だという認識も間違いだ。適切な運動は免疫力を上げるが、過度になれば身体は疲弊し、免疫は低下するそう。

「これは、白血球に含まれていて免疫に関わるNK細胞や、白血球の一種で身体に侵入した細菌を処理する好中球が減少するため。免疫が下がれば、風邪などをひきやすい状態になってしまいます」

 スマホのヘルスケアアプリの機能で、歩数を毎日チェックしている人は多いが、「歩数だけではなく、もっと運動の負荷を意識してもらいたい」と、青柳先生。

身体活動計の一例。最近ではポケットに入れるタイプのものが増えている
身体活動計の一例。最近ではポケットに入れるタイプのものが増えている

「イギリスの調査で、活動量の確認をしていた場合は、そうでない場合と比べ、歩数が1日あたり平均2000歩増えたという報告がありました。モチベーションを上げる上でも役立ちます」

 では、日常生活の中で手軽に運動の負荷を上げるには、どうしたらいいのだろうか。

「正しい速歩きを1日20分、行うこと。その際、歩幅を大きく広げることを意識して歩いてみましょう。

 運動強度が中強度の歩き方は1分あたり120歩程度ですが、それぞれの身体能力によって異なるのであくまでも目安としてください。若い人とシニアでは歩く速さが違っていいのですが、速歩きをした合計時間が1日で20分になると理想的です」