「ルール」が厳しくなった理由

 降車時の撮影NGという“異例通達”の理由は説明されなかったという。そこで、降車時の撮影が禁じられた経緯について宮内庁広報室に問い合わせたところ、

《第73回全国植樹祭式典会場の御着時の撮影取材については、御降車からお出迎え者御挨拶終了までとされていたと承知しています。

 行幸啓先の取材については、関係機関とその都度調整を行っており、今回の取材についても、所要の調整の結果、設定されたものであると承知しており、特に新たなルールが定められたものであるとは認識しておりません》

 とのこと。前出の皇室担当記者は首を傾げる。

「式典担当者や現地の警察官の独断で、降車時の撮影が禁じられたとは到底思えません。宮内庁も当然、認識しているものだと思っていました。現場での厳しいアナウンスを受けて、関係者の間で“情報統制では”という声も上がったほどです」

 5月30日に天皇ご一家が日本橋高島屋を訪問された際も、こんな通達があった。

「ご一家の背後に『HERMES』の店舗が写り込んでいるカットがありました。後日、宮内庁から“写真を使用する際はHERMESの文字を消すように”と指示が。基本的に報道写真を加工するのは避けたいのですが……」(同・皇室担当記者)

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 商標の問題もあるのだろうが、ルールは日に日に厳しくなっているようだ。

「理由は定かではありませんが、一部では雅子さまのご心労を減らすためではないか、と囁かれています」(前出・皇室ジャーナリスト、以下同)

 以前から雅子さまは、報道陣に囲まれる状況やフラッシュ撮影に苦手意識を持たれているといわれてきた。

「インドネシア訪問を目前に控え、ナーバスになっておられるのでしょう。例えば、降車時に足元がよろけたり、お召し物が乱れたりしたら、一部の国民から揶揄されかねません。そうした不安を極力取り除くために、撮影のタイミングを限定しているという見方が強いです」

 雅子さまのご体調は大切だが、“閉ざされた皇室”へ退行してはならないだろう。


河西秀哉 名古屋大学大学院人文学研究科准教授。象徴天皇制を専門とし、『近代天皇制から象徴天皇制へ―「象徴」への道程』など著書多数