向井さんは子宮頸がんの手術後、化学療法や敗血症などの影響でさまざまな後遺症を患い、右の腎臓を摘出して人工血管を入れる手術も受けている。体調が優れない中、代理母出産反対派からのバッシングにも長く苦しめられた。

 48歳のときにはPET―CT検査(※)を経て、S字結腸がんが見つかる。(※全身のがんのスクリーニングを目的とした放射線薬剤を使うがん検査。基本的に健康保険適用外となる)

「早期がんでしたが、私は過去の手術で腹部に癒着が多いため、開腹手術をすることに。いざというときどうするか事前に考えてあったので、このときはサラリと行動できました」

 お腹に残った通算18回の手術痕は“まるで線路のよう”と、向井さんは明るく笑う。

子どもの米国留学に、刺激を受け、大学生に

「子どもたちはアメリカに留学し、現地の高校を卒業しました。その姿を見ているうちに、私もまた勉強をしたくなって。大学を中退したことも心のどこかに引っかかっていましたし、機会があれば“人生の伏線回収”をしたいと考え始めたんです」

 コロナ禍にいろいろ調べ、母校に連絡したところ、在学中に取得した単位が今も使えることがわかった。

「40年近く前なので『まさか!』と驚きました。在籍していた生物農芸学科はなくなっていたので、とりあえずは単位を使える学科を大学の窓口で相談して。ただ、学部への編入時期は過ぎていたので、通信教育課程・児童学科への再入学を決めました」

 この学科を選んだ理由は2つある。

「宮沢賢治にハマっていましたので、児童文学を勉強したい気持ちがありました」

 子ども好きな向井さんは夫婦で高田道場オリジナル体育教室「ダイヤモンド キッズ カレッジ」でのボランティア活動を17年続けている。思いきり身体を動かし、自分を大好きになろうというコンセプトの下、これまで約2万人の子どもたちと触れ合ってきた。

「中には集団行動にうまくなじめず、学校生活の中で傷ついている子も。そうした子どもたちが、学校以外の場所でのびのびと動いている姿を見るのはうれしいですし、少しでも力になれればと考えていたんです。そこで、児童学の知識を得て、より楽しい時間と体験をプレゼントできたらステキかも、と」

 しかし“令和の女子大生”生活は苦労や驚きの連続だ。

「仕事でオリエンテーションに参加できず、何もわからないまま科目を選んだら、レポートと試験で単位を取得する教科に偏ってしまって……。3か月で2000字のレポートを20本も書きました(笑)」

 初めてのオンライン授業にもドキドキしたと語る。

「人生初のZoomが大学のオンライン授業で、右も左もわからず。子どもたちに横についてもらってやり方を教わり、無事につながったときにはホッとしました」

 課題をこなす際には、話題のChatGPTを開くこともあるという。

「『子育て支援に成功している自治体は?』と質問すれば、市区町村名が出てくるので、その役所のサイトに飛んで、すぐに調べられる。私にとってのChatGPTは、“どんな質問にも答えてくれる優しいおじいちゃん”。ミスもありますが、『知恵袋』や『生き字引』として、ほんわか助けてもらっています」