時間がかかっても後遺症は治っていく

「とはいえ、これらの治療法もすべての患者さんに効果があるわけではなく、自然経過だけで改善に向かう場合もあります。特に全身倦怠感などについては、しっかりと休息し、無理をせずに身体と相談しながら日常生活を送る『ペーシング』がもっとも重要です」

 愛知医科大学のデータでは、症状が軽快した患者の半数が、コロナを発症してから後遺症が軽快するまでに160日(約5か月)以上を要している。

新型コロナウイルス(※写真はイメージです)
新型コロナウイルス(※写真はイメージです)
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「逆にいえば、約半数の方は5か月以内に症状が軽快したということです。いつまで症状が続くのか不安に思っている患者さんはとても多いのですが、時間がかかっても後遺症は必ず治っていきます。薄紙をはぐように少しずつよくなっていきますので、『根気よく前向きに過ごしましょう』とお伝えしています」

 コロナ後遺症患者の正確な人数はわかっておらず、国内で数十万人にも及ぶともいわれている。後遺症のメカニズムの解明と、適切な治療法の発見が最重要課題なのは間違いないが、社会にも、後遺症患者に対するより一層の理解や配慮が求められている。

「コロナ後遺症で休職していた患者さんが、職場復帰後にいきなりフルタイムでの勤務を求められることがよくあります。せっかく軽快したのに、過重労働でまた元に戻ってしまうケースも少なくありません。復帰後はある程度の期間にわたって猶予を設け、少しずつ仕事を再開できるようにするなど、企業側の配慮も必要だと感じています」

 今年5月、新型コロナの感染症法上の位置づけは2類相当から5類へと引き下げられた。街が活気にあふれ、日常に戻っていく中、いまも後遺症により辞職や転職を余儀なくされている人たちがいる。「気にしすぎ」「考えすぎ」など、職場や学校だけでなく家族や医療機関からも理解を得られない人たちもいる。

「ポストコロナ元年」ともいわれる今年、コロナは過去のものになりつつあるが、後遺症のある人たちにとって、コロナ禍は今も続いている。後遺症患者のサポートや復帰支援について、今こそ社会全体で考えていく必要がある。