容疑者の母と被害者は良好な関係を築いていたが…

 中馬容疑者の母親はこう語る。

「美崎さんがひとり暮らしになった当初はトラブルはなく、母親の手料理が恋しいんじゃないかと肉じゃがなどを作ってよく持って行ってあげたんです。翌日、美崎さんは“ごちそうさまでした”とタッパーを返しに来るなど良好な関係でした。それがすっかり変わってしまって、私が“そんなに憎らしいの?”と聞いたら、“ああ憎らしい”って。2〜3年前には大家さん立ち合いで“もう騒がない”という誓約書を書いてもらったんですが、全く効果がありませんでした」

 そして事件当日の朝7時すぎ。美崎さんは自宅前で中馬容疑者の母親とばったり会い、数年前の出来事を持ち出して絡んできたという。

「“おまえんとこの息子に暴力を振るわれた”と言い始めたんです。かつて息子は美崎さんの胸ぐらをつかんでシャツの襟を伸ばしてしまったことがあり、それをまた責めようとする。私は“おまえにおまえと言われる筋合いはない”と言い返し、自宅に戻りました。息子が起きてきて“どうした?”と聞くので説明し、私は外出しました。11時すぎに帰宅すると息子の姿はなく、どこに行ったのだろうと思っていたら隣宅から帰ってきて……。息子のやったことは悪いことだし、美崎さんには申し訳ないと思っています。だけど、美崎さんの悪口はあまりにひどく追い詰められていたのも事実です。今、振り返っても、どうすれば解決できたのかわからないんです」(中馬容疑者の母親)

 死人に口なし。中馬容疑者側の言い分だけを鵜呑みにするわけにはいかないが、複数の近隣住民が美崎さんの言動を問題視していたのも事実だ。そんな中、美崎さんの知られざる一面を知る地元の女性に話を聞くことができた。

「本性はそんな悪い人ではないんです。自業自得とはいえ、周囲に嫌われてこう言っていました。“ボク、アルコール依存性なんだ。嫌われることをやろうとは思わないのに、どうしてもやってしまうんだ。変質者扱いされて悲しい。ボクどうしたらいいでしょう。辛いんだ〜、本当に辛いんだ〜”と泣くんです。ずっと泣いているんです」

 自分をコントロールできない美崎さんと、神経質な中馬容疑者。隣り合ってはいけない2人だったのかもしれない。しかし、どちらにどれだけ非があろうと、それは命を奪われる理由にはならない。