『シカゴ』や『マイ・フェア・レディ』、大好きなミュージカル作品はたくさんあったが、なかでも一番好きだったのは『キャバレー』。舞台はもちろん、尊敬する振付家、ボブ・フォッシーが監督した映画も見た。「どうしても『キャバレー』をやりたかった」という小柳さんは、会社と何度も話し合いの場を設けたが、その願いが叶うことはついになかった。

ミュージカルは大勢の人を使わなければいけないし、稽古のスケジュールに何か月も取られるでしょう。それよりは1回コンサートをやったほうがお金になるわけですから、会社としてどちらをやるかは明白ですよね。

 こんなこと言うのはアレですけど、歌が売れていなかったらそっちの世界へ行けたのかな……と思うときも正直ありました。それからも自分のコンサートやディナーショーで踊ったりしていましたが、とうとうミュージカルには巡り合えませんでしたね」

 現在、日本のミュージカルは人気コンテンツへと成長。大手芸能プロダクションがミュージカルの制作をするのも当たり前になった。そんな今の状況もまた、小柳さんに複雑な思いを抱かせる。

「当時はこのままダンスができないのであれば、会社を辞めて劇団四季に入団するか、ブロードウェイに留学するか真剣に考えたこともありました。もし本当にその道を選んでいたら自分の現在地も違ったかもしれませんね。ミュージカル女優になって、今も舞台で踊っていたんじゃないかしら」

 昔の自分に何かひとつアドバイスをするとしたら?

「もっと頑張って会社と戦え!と言いたいですね。あなたの未来が大きく変わるかもしれない瞬間なのよと伝えたいです」

小柳ルミ子(こやなぎ・るみこ)●1952年生まれ。'71年『わたしの城下町』で歌手デビュー。同年、日本レコード大賞最優秀新人賞受賞。MCを務める番組『ルミ子の食卓』(テレビ朝日系)が毎週金曜夜1時20分から絶賛放送中。

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(取材・文/中村未来)