飼育放棄の飼い主が後を絶たない

「うちは繁殖目的の方にはいっさい子をお譲りしません。ほかのシリアスブリーダーも同じだと思いますし、日本ではコイケルはブリーダーから直接購入するしかありませんが、あの手この手で、悪徳繁殖業者がコイケルを手に入れてしまわないか危惧しています」(宮田さん)

 また、動物愛護活動に熱心に取り組む、箱崎加奈子獣医師はこう語る。

「衝動的に、気軽に購入できるペットショップなどでを迎えたはいいものの、結局、飼育放棄をする飼い主は後を絶ちません。かつては、シベリアン・ハスキー、最近ではミニチュア・ダックスフンドや柴などですね。

 コイケルも含めて猟や作業は運動欲求が高く、最低でも1日1時間以上は散歩が必要です。運動欲求が満たされないと、吠え、噛み、破壊といった問題行動を起こしやすい。その行動が手に負えなくなり、の飼育放棄につながるのです。

 の病気の看病や治療費が負担になって、を手放す飼い主もいます。その種に見合った運動量や食事量を与えてあげ、さらに適切な獣医療を受けさせてあげられる自信と覚悟を持てる方に、を迎えてほしいです」

 宮田さんは、コイケルが飼いやすいかどうかを聞かれた場合、次のように答えているという。

「飼いやすさは、ちょうど中間くらい。オランダ皇室の護衛だった背景もあり、警戒心は強めです。家族に忠実なのは魅力ですが、外部の人やには反応しやすいでしょう。いわゆる“警戒吠え”はわりとしますね。小型と中型の境目くらいのサイズなので、吠え声は小さくもありません。いずれにしても、コイケルを迎えたらしっかりトレーニングをすることをおすすめしています」

 大谷は、小学校時代から日ハム時代まで岩手県の実家でゴールデン・レトリーバーと暮らしていた愛家。コイケルとも上手に信頼関係を築き、お互い幸せな日々を過ごしていくに違いない。

 日本のの平均寿命は14~15歳。長年寄り添い合う家族としてを迎える前に、種の特性などをしっかり調べ、万全な準備を整えたい。

 悪徳業者だって、消費者が賢くなって相手にしないようになれば滅びるだろう。なにより、すべてのが幸せになることを、大谷も望んでいるはずだ。

<ドッグライター:臼井京音>