「押し入れを全部開けて」自信のなさを見破られた

 家を訪れたやましたさんに言われて衝撃的だったのが「直巳さんって自己肯定感が低いね」というひと言。

「仕事もリーダーを任されていて、自分なりにキャリアを積んできたと思っていましたが、確かにいまいち自信が持てず、ストレスで家が散らかる始末。部屋の状況を見て、それを一発で見抜かれてしまったんです」

 さらに、やましたさんに言われ、押し入れの襖(ふすま)を外すと、いろんなものがびっしり詰まった状態があらわに。

「やましたさんから『直巳さん、これどう思う?これがあなたの状態よ』と言われてひどいですね、と答えました。普段は襖をちょっとだけ開けて一部だけは見ていたけど……」

 自分がいかに多くのものを抱え込んでいたかに気づいた義永さんは、やましたさんのアドバイスを受けながら、45リットルのゴミ袋を80個、さらに袖を通していないブランドものの服も大量に手放した。

 これを機に、自分に必要なものを厳選して持つことや、必要のなくなったものを潔く手放す習慣がついたという。同時に心の不安からも解放されていったそうだ。

死別を乗り越えて「おひとりさま」暮らし

 現在、義永さんはひとり暮らしをしている。近年にプライベートで不幸が重なった。

「2020年には実の父、パートナー、その母を亡くしました。そのときはもちろん悲しかったのですが、感謝の気持ちがあふれ、いい形でお別れができました。

 モノとの向き合い方を学んだことで『モノも人も、いつかはさよならするもの』という意識が芽生えていたからこそ、大切な人の死を受け入れることができたと思います」

 3人の遺品整理をする中で、義永さんは「あの世にモノを持っていくことはできない」と実感し、さらにものを減らすため自宅のリフォームを敢行。容量を最小限にした「見せる収納」にすることで、自然とモノの量が減る仕組みを作った。

 かといってモノをただストイックに減らすわけではなく、趣味のフルートや「推し」にまつわるグッズなどを持つことは我慢せず。好みが変われば過去のものは潔く手放しながら、今必要なもの、好きなものだけに囲まれる生活を満喫している。

「住まいを見せることは自分を見せることで、『どこから見られても大丈夫』という自分への信頼感が増しました」

あえて扉なしにリフォーム。「総量規制しようという意識が高まりました」
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