「上昇志向の塊だね」

 その後は仕事に集中。バラエティーだけでなく、ドラマや映画でクセのある役をこなして芝居に目覚め、広末涼子ら有名女優を多く抱える事務所に移籍した。そんな資質を早くから見抜いていたのが、TBSで上司だった安住紳一郎。彼女の新人研修ノートを見て「あなた、上昇志向の塊だね」と指摘したという。

 その上昇志向はコンプレックスの裏返しかもしれない。田中家はエリート一族で、姉は東大を卒業後、楽天などの一流企業で働き、フルート奏者としても活動している。子どものころに習い事をする過程で、姉には勝てないと感じた妹は中高時代の器械体操だったり、青山学院大を経ての女子アナ、女優という進路だったり、姉がやらないようなもので勝負する生き方を選択していくわけだ。

 なお、姉は結婚していて2児の母でもある。その点でも、こちらはあえて独身を貫くつもりなのかなとか、例えば、由美かおるのような美魔女路線にでもいくのかな、などと想像していたのだが─。

 ここへ来ての恋愛モード切り替えはやはり、年齢的にも結婚、出産というところを真剣に考えたいということだろう。ただ『Destiny』での役柄について、彼女はこんなことを言っている。

「欲しいものは何でも手に入れてきたお嬢様かのように映りますが、実際には“本当に欲しいものがいつも手に入らない”と嘆き苦しむ孤独な一面も」

テレビ朝日系ドラマ『Destiny』のキャスト陣。中央が石原さとみ、左隣が亀梨和也、いちばん右が田中みな実(番組公式HP)
テレビ朝日系ドラマ『Destiny』のキャスト陣。中央が石原さとみ、左隣が亀梨和也、いちばん右が田中みな実(番組公式HP)
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 選択肢が多いからこそ、自分らしさに迷い、好かれたり嫌われたり、褒められたりけなされたりしながら揺れ動く。それは彼女自身にも、さらには多くの独身アラフォー女性にも、おそらく通じる葛藤なのだ。

宝泉薫(ほうせん・かおる)アイドル、二次元、流行歌、ダイエットなど、さまざまなジャンルをテーマに執筆。著書に『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)。