村重のロジックが破綻した原因

 改めて整理しておくと、松本や後輩芸人は、「飲み会」が開かれていたことやそこで「性行為」があったことは否定しておらず、「性接待」や「性加害」について否定している。実際、松本所属の吉本興業は裁判に向けて、《「性加害」に該当するような事実はないということを明確に主張し立証してまいりたい》と発表しているのだ。

 つまり論点は「性加害」があったか否かであり、松本側は性加害がなかったと主張して裁判を起こしているわけだが、村重は女性側の主張を鵜呑みにし、性加害があった前提で持論を展開。これから裁判でその部分(「性加害」の有無)の真実を明らかにしていこうというときに、もう「性加害」があったテイでコメントしてしまっていたというわけだ。

 おそらく村重の主張は、松本が1月8日にXで、《事実無根なので闘いまーす。それも含めワイドナショー出まーす。》と投稿したことを軸に展開されている。

 村重はこの松本のポスト内容をもってして、松本が「性行為」自体を否定していると捉えたのだろう。

 たしかにこの時点では、松本がどこの部分が事実無根なのかを明示していなかったので、「飲み会」を否定しているのか、「性行為」を否定しているのか、「性加害」を否定しているのか、不透明だった。

 そのためこの段階では、文脈的に松本が「飲み会」や「性行為」を否定しているとも読めたし、村重以外にもそう捉えた人は少なくなかったはず。だがその後、松本側は「飲み会」や「性行為」は否定せず、「性加害」を否定するというスタンスを明確にしている。

 これらの経緯を整理すると、村重のロジックの破綻の原因は主に2つ。

【1】松本側が当初は「性行為」自体を否定していたと勝手に解釈し、ウソをついていたと決めつけていること

【2】裁判前にもかかわらず、女性側の被害の主張が真実だという前提で語り、松本側に謝罪を求めていること

 この2点が非常にまずいのである。