「なぜ、それほどまでに二郎を食べるのか?」その1

 1日に複数杯も“二郎を食べたい”と思う欲求について──。

「二郎は今全部で44店舗あって、すべてが一緒の味だったらこんなにいろいろ行きたいと思わないんですけど、44店舗全部違います。最初は休みの日に遠くの店舗も含めて2、3店舗回って、平日は1杯とかだったんですけど、ただやっぱり1日に1杯1店舗だけだと何か物足りない、とまではいかないんですけど、いろんな店舗の味を知っておきたいというか……」

「何度も行かなくても、1回全店回ればそれぞれの店の味を知ったことになるでしょ」。そう思う人も少なくないだろう。しかし、ここに二郎の二郎たるゆえん、ハマる人はハマる中毒性のようなものがある。

「44店舗もありますし、店ごとに味も変わりますし、同じ店でもちょっとずつ変わってくる、変わる日がある。1日1杯しか食べないとしたら1か月30杯になってしまうので、それだと回りきれない店舗が当然出てきます」

 “変化”の確認は、突発的なメニュー、期間限定で出される特別メニューなども含まれるが……。

「ネットを見て、“なんか豚が変わった気がする”とか“麺が変わった”と言う人がいるんですよ。それを確かめに行きたい。またそういった変化を自分で気づくことも多い。“なんか前回と違うな”とか。それが“ブレ”のときもあれば、店側が明らかにちょっとずつ変えてきてるなとか。半年くらい行かなくても変わらないっていうのもあると思うんですけど、結構日々変わる店舗もあったりして。それを自分で気づきたいっていうのはありますね」

 二郎は大手チェーンのように明確なレシピを共有しているわけではないため、各店舗で味が異なる。また二郎のスープの主原料は豚骨そして豚肉になるが、それには当然個体差があり、意識的でも無意識的でも味は日々微妙に異なる。他の飲食店であれば、本店と支店で味が違うとなれば不満に思う人も多いだろうが、玄人のジロリアン(二郎愛好家)はその差を“ブレ”と捉え、それを含めて楽しむ人も少なくない。全店舗を回るスタンプラリーなど、とうの昔に終え、終わらない“日々の変化”のスタンプラリーを行っているといえる。

「評判では“違う”っていっても、自分が食べたら“そんなに変わらないな”ってときもあるし、やっぱり自分が食べてみてこそで、“百聞は一食にしかず”みたいな感じですよね。何も変えていなくてもブレるときもあると思いますし、明らかに変えてきているときもあるので、美味しいのはもちろん、それを知るのが楽しい」

 自分にとってあまり良しと思わない“ブレ”があったとしても、「それはそれで嬉しい(笑)。こういうときもあるんだ!という感じ」だという。某タレントは「白って200色あんねん」と言ったが、二郎も店ごとに44食。それどころか日々によってタイミングによって全然違う、という。