「なぜ、それほどまでに二郎を食べるのか?」その4

 大量の麺、そして脂、塩分……どう考えても身体には良いとは思えない食事だが、健康との兼ね合いについて──。

 ちなみに二郎“以外”のものは食べるのか?

「全体の9割、9割5分が二郎ですが、たまに食べますね」

 あくまで主食は二郎。

「一般的には健康によろしくなさそうなものを食べてるので、健康的なものを。夜中に納豆食べたりとか。人との会食のときとかはあまり炭水化物を食べないように……」

 日々の二郎×複数杯に対して、夜中の納豆。たまの糖質制限。焼け石に水どころか溶岩にスポイトで水を垂らした程度に思えるが……。

「体重維持をするために『16時間断食』を意識しています。もし毎日10杯とか食べていれば太ると思うんですけど、平均して1日3、4杯で、例えば前の日の夜に食べたら、次の日の日中は一切食べないようにすると、かなりの時間食べないことになります。それで体重を気合で戻している部分が大きいですね。空腹感はあるけど、今は身体のために大切なことをしていると思って。なので、今(の取材を受けている時間)は自分を食べている感じです(笑)」

 二郎は高カロリー食とあって、ファンはふくよかな人が多いと思われがちだが、行列に並んでいるのはそういった人が多いということはない。1日3、4杯食べている『直系二郎大好きマン』氏も中肉中背の一般的な男性の体形である。

「健康診断は異常ないですね。会社の健康診断もありますが、1年に1回だけだと不安なので、自主的にも受けに行くようになりました。そちらも問題ありませんでした。またなるべく運動はするようにしています。少しでも歩けるタイミングがあれば歩く。二郎を回るときもなるべく歩くようにします。多少の距離があっても二郎から自宅まで歩いたり。また基礎代謝が高くないと太ってしまうので筋トレも。不調が身体に表れるといったこともないですね」

 愚問すぎるかもしれないが、最後に二郎の魅力を尋ねた。

「やっぱり店舗によって全然違うところに魅力を感じていることが大きいですね。本当にそこに取り憑かれている感じ。二郎でしか得られない満足感、ほかで代替は利かないです」

 普通の人、また特に食に気を使っている人から見れば、異常にしか見えない食生活。糖質、脂質、塩分……そのすべてが過剰だろう。しかし、二郎を愛する者にとって“二郎でしか摂取できない栄養素”がきっとある。それを人は“中毒”と呼ぶのかもしれないが、健康を害すことなく自分の趣味をこれだけ愛することができるのであれば、それはきっと幸せだろう。

 取材を終え、『直系二郎大好きマン』氏と別れると彼は雑踏に消えた。今日もどこかの二郎に向かう。

 あなたも「ニンニク入れますか?」。