「保険証の返却を14日以内に行う必要があると思っている人が多いのですが、その期限がないケースが大半です。まずは、事前に窓口に電話をして期限の確認をし、あわせて、必要書類や予約が必要かどうかをしっかり確認することも大切です。

 書類に不備があったり、事前予約が必要なのにしていなかったということであれば、結局二度手間になってしまいます」

“急がば回れ”。不備なくスムーズに手続きを進めるには、事前確認が不可欠だ。

女性特有の復氏届と姻族関係終了届

 シニア女性なら知っておきたいのが、女性特有の次の2つの手続き。

 名字を旧姓に戻す手続きである「復氏届」と、舅姑(きゅうこ)といった姻族(配偶者方の血族)との関係を解消する手続きである「姻族関係終了届」だ。姑との仲が悪い場合、夫に先立たれたなら真っ先に届け出たい手続きのようにも思えるが……。

「『復氏届』で旧姓に戻れば、運転免許証や銀行口座など、いくつも名義変更が必要になり、手間が増えてしまいます。

 また、『姻族関係終了届』で注意しなければならないのは、姻族の関係を断つことができるのは届け出た本人だけという点。子どもがいる場合、子どもと舅姑との血族関係まで切ることはできません。

 舅姑の扶養義務を自分が負うことはなくとも、子どもが負う可能性はあると考えれば、結局のところ自分と舅姑との関係も完全に切れたとは言いにくい状況です。

 この2つの届け出についてはよくよく検討して、必要だと感じたときに手続きするのがいいでしょう」

 家族の死後にどんな手続きが必要なのかを把握できれば、損することなく、手間を省いた対応ができる。万一の時にも慌てることのないよう、しっかり心づもりしておきたい。

明石久美さん●相続専門の行政書士。『配偶者が亡くなったときにやるべきこと』(PHP研究所)、『人に迷惑をかけない終活』(オレンジページ)など著書多数。
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取材・文/後藤友美(ファイバーネット)