ヨーグルトは泥を食べている感覚
大学病院での検査の結果は『原発不明がん』。つまり、がん細胞はあるが、出発点となる“本丸”のがんがどこにあるのかがわからなかった。
「喉の奥の組織を調べたり、PET検査もして1か月ほどかけてもわからず、原発不明がんと診断されました」
妻と相談し、がん専門病院でセカンドオピニオンを受けたものの、やはり原発は不明のまま。首のしこりを切除する予定だったが、手術直前の診察で、担当医が喉の奥にわずかな異常を感じ取り、再度検査を行った結果、中咽頭がんが判明したという。
「先生の経験や勘、愛情でギリギリのタイミングで見つけてくれてすごいと思ったし、紹介してくれた大学病院の主治医にも、すべてのめぐり合わせに感謝しましたね」
ワッキーさんは切除手術を回避し、抗がん剤治療3回、放射線治療を30数回受ける選択をした。2か月におよぶ入院生活。だが、治療の副作用は想像以上だった。
「何を食べても良かったので、お気に入りのみそラーメンをよく食べていたんです。でも10日ほど過ぎたころ、急に味がわからなくなって。ヨーグルトなんて泥を食べている感覚で、そのうち気分も落ち込んで……。放射線を浴びると喉が痛くなり、ごはんも食べられなくなりました」
退院から4年が経つ今も、味覚は5割、唾液は3割しか戻らないという。
「何を食べてもうまいと思えないし、好きだったラーメンも違う味に感じたり。お医者さんいわく味覚が今より落ちることはなくても、5割のままがずっと続くかもしれないし、100%元に戻ることもないそうです」
咽頭がんは初期の段階では自覚症状がないことが多く、症状が進行してから発見されるケースは少なくない。定期的な検診や、気になる症状がもしあればかかりつけ医へ相談を。