父のアドバイス

 経済関係の本は大量に家にあった。康平さんは、それらを読んで独学で「経済」を学んだのだ。大学は経済学部に進んだが、入学前から基礎知識が備わっていたために、ほとんど大学には行かなかったという。父親はいつも仕事で不在。森永家は母子家庭のような状態だったらしい。

「僕は大学院に行ってさらに深く学ぼうと思ってたんですね。で、院試の勉強をしてたら、父親が“1回民間で働いてみたほうがいい”とアドバイスしてくれたんです」

 確かにモリタクさんも、東大卒業後、日本専売公社(現JT)に入社し、経済企画庁などに出向したのち、三和総研の研究員としてテレビやラジオに出演するようになって、ユニークな経済の専門家として一躍、注目を集めた。その後、獨協大学経済学部教授に就任し、経済アナリストとして活動していた。

「親父いわく、学問だけをやってしまうと結局、机上の空論を振りかざす学者になってしまう。理論だとこうなんだみたいな感じにね。いや、理屈じゃそうだけど、現実はそうじゃないだろうと。だからとりあえず民間で3年働きなさいと言われた。その後もし、大学院に行きたいと思ったら、そのとき行けばいいと言ったんです。このアドバイスはすごく筋が通っていました。そのとおりだなと当時はすごく腹落ちしたんです」

 モリタクさんとの共著はどんな内容なのか。

「父と僕が交代で書いているんですが、父の担当のところにはまったく口出しはしていませんね。本人がどう思ってたかわからないですけど、親父は結構、キャッチーというか、ちょっと極端なことを言うタイプですからね。結果的にそれが賛否両論を巻き起こして注目を集めるみたいな。でも、それは狙ってやってたのか、自然とそうなのか、ちょっと最後までわからなかったですね」

 モリタクさんは「NISAは危険だ」「これはバブルだ、きっと崩壊する」と言っていたが、康平さんはどう思うのか。

「僕は、投資はあくまでも自己責任だと思っていますから、別にやりたくないと思う人に、“やらなきゃダメだ”って言うつもりもないし、逆にやってる人に対して危険だからやめようと言うつもりもない。ただ、その自己責任ってすごく大事だと思う。

 中には、おまえの父親がやるなって言ってたから俺はやらなかったんだけど、その間に株が上がってしまった。どうしてくれるんだ、みたいなクレームは僕のとこにはいっぱい来るんですけどね(笑)」