演歌歌手の仲間たちと仲が良く、切磋琢磨してきたことは生きる原動力となっている。

二葉百合子さんに指導を受けた『二葉組』として、坂本冬美さん、藤あや子さん、石原詢子さん、島津亜矢さんとはなんでも話せる間柄です。ライバルでもあり、癒される仲間は本当に大切な存在です

倒れたときにまで周りの皆さんに負担をかけたくない

 一人で暮らすことに不安がないわけではないが、倒れたときのための見守りサービスは必要ないという原田さん。

「もしものときのために私よりも若い50代の友人から、見守りサービスの設置をすすめられましたが、倒れたらそのときが寿命だとも考えています。なんとしても助けてもらいたいという気持ちがないんです。両親を見送ったことで、自分が背負っている義務は果たしました。

 こうして仕事をさせていただけることで十分幸せなので、倒れたときにまで周りの皆さんに負担をかけたくないですね。父は畑で倒れてそのまま旅立ち、母は施設に入って99歳まで長生きしました。私は父に似ているので、パタッと逝けるのではないかと思っています

 芸の道に生きてきて、これからも歩みを止めずに究めていきたいと語る。

「私の周りには何回も結婚したり、男性がいないと生きられないという羨ましい女性もいらっしゃいますが、私はむしろ一人だったからこそ頑張れた、一人だったからこそ、たくさんの人に助けていただけたと感謝しています。

 一人だったからやれなかったことは、ほとんどありません。独身だったことを後悔したことはないですし、ここまで歌手としてやってこられてよかった、ありがたいという気持ちしかないです。これからもこんなふうに生きていけたらと思っています

取材・文/紀和 静

はらだ・ゆり 1954年生まれ、熊本県天草市出身。鹿児島大学教育学部音楽科卒業後、小学校の音楽教師に。その後、北島三郎一門となり、1982年6月、キングレコードより『俺に咲いた花』でデビュー。代表曲に『木曽路の女』『津軽の花』など。『NHK紅白歌合戦』に3年連続出場、日本レコード大賞金賞6度受賞。2024年12月に新曲『春街酒』、アルバム『遥かなる路』をリリース。著書に『ひばりとカラス』(読売新聞社)、『夢ひとすじに』(竹内書店新社)がある。