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ー “パンダ外交”の実態
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ー メリットは「中国7割、日本3割」

 今年6月、和歌山県のアドベンチャーワールドで飼育されているパンダ4頭が、中国に返還される。'94年から日中双方で取り組んできたジャイアントパンダ保護共同プロジェクトの契約が、今年8月で満了するためというが、アドベンチャーワールドのある白浜町が中国の成華区との友好都市提携を断ったからという話も。

“パンダ外交”の実態

 また、来年2月には上野動物園のシャオシャオとレイレイも返還され、いよいよ日本はパンダがゼロの国になる。これまで中国の外交カードの1枚として使われてきたパンダ。外交に振り回されるなら、パンダは必要ないのでは!? 日中関係に詳しいジャーナリストの周来友さんに聞いた。

「もともと中国の国宝であるパンダは、その愛くるしさから“人寄せパンダ”という言葉もあるほど。1941年、日中戦争時に蒋介石の妻がニューヨークのブロンクス動物園にパンダを贈呈して米国から軍事援助を得ようとしたのが“パンダ外交”の始まりで、それ以来パンダは、中国の外交カードとして各国との間で使われてきました」(周さん、以下同)

 日本にパンダが初めて来たのは'72年。日中国交正常化を記念し、友好のシンボルとして2頭のパンダ、カンカンとランランが中国から贈られた。上野動物園の一般公開では開門前から長蛇の列ができ、一大ブームが巻き起こる。

「最初は贈与でしたが、その後ワシントン条約の対象動物となり、学術研究や保護目的での貸与に移行。中国がパンダを貸与する代わりに、相手国からパンダの保護・研究費として受け取る“レンタル料”は、ペアで年間100万ドル程度(約1億円前後)といわれています。さらに、日本で生まれたパンダの所有権も中国にあり、返還期限もあるのです」