恐ろしい「国外からの介入」
恐ろしいのは、そうした動画─SNS上で特定の行動(「いいね」やフォロワー数の水増し、情報の拡散など)を自動的または人力で大量に行うための組織的な仕組みを「ボットファーム」と呼ぶのですが、これらを作成し発信しているのが、ドイツ国外(!!)からだということ。
主に、IPアドレスで東欧や旧ソ連の国にあると表示される「ボットファーム」の拠点が動画を作成し、ユーザーのおすすめ動画に登場しやすいようにコントロールし、依頼者から報酬を得ている……という実態があります。おそらくこれらの国の人々は雇用が安定せず、貧困にあえいでいますから、よいお小遣い稼ぎになる。おまけに、他国の政治事情なので罪悪感もない……。
インターネット上の情報流通を止めることはできないですから、真偽が定かではない極端な情報が国を越えてどんどんやってくる。インターネットやSNSを利用すれば、他国が自国の政治に間接的に介入することができる時代に私たちはいるというわけです。
政治に関心のない層が、「ボットファーム」によって極端な思想に染められてしまうかもしれない。次は、日本の番かもしれません……。

谷本真由美 たにもと・まゆみ 1975年、神奈川県生まれ。著述家。元国連職員。ITベンチャー、コンサルティングファーム、国連専門機関、外資系金融会社を経て、現在はロンドン在住。X上では、「May_Roma」(めいろま)として舌鋒鋭いポストで人気を博す。著書に『世界のニュースを日本人は何も知らない』シリーズ(ワニブックス【PLUS】新書)など著書多数。 イラスト/西原理恵子
構成/我妻弘崇