パワハラに見えるけどお互いにウィンウィン
よく語られる「あの時代だから放送できた」という番組たち。今でいうセクハラやパワハラが満載だった当時を、宝泉氏と共に振り返ってみると─。
ZONEのメンバー以外にも、『うたばん』では石橋にいじられたアイドルがいる。モーニング娘。の中で標的になったのは保田圭と飯田圭織。安田は“ブス!”と面と向かって言われ、飯田は“ジョンソン”というあだ名をつけられた。
「いまだに“パワハラ”などといわれますが、グループの中で地味だった2人が石橋さんのいじりのおかげで注目を集めたことも事実です。ある意味“ウィンウィン”が成立していたと思います」
確かに、安田や飯田は『うたばん』終了後、久しぶりに石橋と会ったとき「あのことがあるから今がある」と、感謝の言葉を述べていた。
「どこまでが本心かわからないけれど(笑)、年月がたって、恨みを語ることは野暮だし、恥ずかしいという感覚が昔はありましたよね」
遡ると、'89年に放送が始まった『オレたちひょうきん族』(フジテレビ系)では、女子アナいじりが公然と行われていた。当時の局アナで、番組内の『ひょうきんベストテン』でレギュラーだった長野智子は、
「番組の中で後ろから胸をわしづかみにされたり、長いスカートをはいているとその中に芸人さんが入ってきたり」
と、振り返っている。
「番組を盛り上げるため、芸人も必死でしたね。あの番組では彼女たちも“ひょうきんアナ”と呼ばれて、コントの中に入り込んでいました。彼女たちはタレントではなく局の社員。数字を取るために、そのくらいは当たり前、みたいな雰囲気があったと思います。芸人たちなんて、もっと身体を張ったことをしていましたし」(宝泉氏、以下同)

それで思い出されるのが、『スーパージョッキー』(日本テレビ系)での熱湯コマーシャルだ。熱湯に入れた秒数だけ宣伝をできる、という企画。カーテンで囲われた中で女性が水着に生着替えをして挑戦することもあり、昼帯バラエティーでのお色気路線の走りともいえる。
「局アナの大神いずみさんにその役目が回ったとき、彼女は涙を流して断固拒否。放送終了後、拒否したことを会社から“泣くなんて何をしているんだ”と非難されたとか」
局には全国から「水着になるのも仕事だろう」といった抗議が殺到したとか。今とは真逆の反応だった。まさに“あの時代だから”のエピソードだ。
テレビの“エロ”が性教育になっていた『スーパージョッキー』がお色気路線に走ったことは、視聴率が取れる、ということだろう。この番組が放送開始した'83年、深夜帯で『オールナイトフジ』(フジテレビ系)が始まった。女子大生ブームを巻き起こしたこの番組、アダルトビデオの紹介や、風俗店探訪といったコーナーも。