より過激な“エロ”を扱った番組がスタート
その後を追うように翌年、『TV海賊チャンネル』(日本テレビ系)、『ミッドナイトin六本木』(テレビ朝日系)、『夜はエキサイティング』(テレビ東京)といった、より過激な“エロ”を扱った番組を各局がスタートさせた。
「結局、その半年後にはその過激さから郵政省(現・総務省)から深夜番組自粛の要請があり、お色気路線は駆逐されました。賛否はありましたが、僕は“わいせつ”ではない“エロ”は必要なのでは、と思います」
ひと昔前までは昼ドラなどで入浴シーンや濡れ場もあり、女性の胸が出ていることも普通だった。だが今やそういったシーンは、子どもに悪影響を与えるとして地上波ではご法度になっている。
「世の中がきれいごとに傾いていくと、どこかに歪みが出てくると思います。極端な話、子ども時代に女性の裸を見たことがない男性が女性と手もつなげないとか。大人もそうですけど、“見るな”“やるな”ということほど魅力があるじゃないですか(笑)」
昔、PTAから子どもに見せたくない番組、と指定されたドリフのコントを例にして、宝泉氏はこう語る。
「下ネタって、エンタメの基本だと思うんです。ドリフのコントの中で、カトちゃんが“うんこちんちん”と言うだけで昔の小学生は大笑いしていましたよね(笑)。
スカートめくりなんかも、学校でまねするわけですよ。そうすると女子に怒られたり嫌われたり、先生からも怒られながら加減を覚えていく。今はセクハラなんて言ってますけど、実は性教育だったんだと、昭和生まれの人間としては言い続けたいですね」
また、こうした“不適切”な企画だからこそ、タレントたちの素顔が透けて見えるのも面白いという。
「“寝起きドッキリ”なんてその最たるもの。清純派と思われていた子が意外にもだらしない感じだったり、その逆だったり。それまでのイメージとは違う面が出て、これまでオファーがなかった仕事を取れる可能性も出てくるわけです。これって、本人にとってもありがたい話ですよね」
そんな企画を大手を振ってできない今の社会。テレビ番組の生き残る企画とはどんなものなのだろうか。テレビ局が持っている、今ならセクハラでアウト!な過去映像を面白がることだと宝泉氏。
「今、同じことをやろうとしても絶対にできないし、逆に当時はこんなことをやっていたのは面白いよねと、昭和を懐かしむ人たちがいます。一方で、こんなことで笑っていたなんて、どこが面白いの? とカウンターを当ててくる人もいます。
そういったジェネレーションギャップをネタにするなど、昔のことを否定するのではなく、リスペクトしつつエンタメの一つとして昔の映像をそれぞれの立場で楽しむというスタンスをとる。そういう方向でやっていくしかないのかもしれません」
そして、コンプラに縛られ、昔のことを蒸し返してくる人たちにはこんな言葉を。
「時代背景や考え方が当時と今とでは違うじゃないですか。そこに遡って裁くことをやりだすと、次は現在の人が未来の人たちに裁かれることになる。これってすごく無駄なことだと思います」
昔は昔、今は今。その違いを楽しむくらいの余裕がない社会はどれだけ窮屈なのか。フジテレビの清水賢治社長は、局の体質の改善案として脱“楽しくなければテレビじゃない”を宣言した。でも、楽しくなければ、誰もテレビを見なくなるのでは? “オールドメディア”の意地の見せどころは今なのかも─。
<取材・文/蒔田 稔>