再ブレイクのきっかけ
そんな彼の再ブレイクのきっかけとなったのが、2023年と24年にBS松竹東急で放送した『A Table!』という連続ドラマだ。吉祥寺の外れを舞台に、夫婦ふたりの気ままな暮らしを市川実日子と演じていた。ふたりは本で見かけた料理などを一緒に作るのだが、そのシーンはほぼアドリブのように自然で、他愛もない会話を交わしながら、ふたりの暮しが永遠に続いていくような空気感はとても魅力的だった。
BSなので、そこまで視聴者は多くなかったと思われるが、クリエイターたちの目には留まった様子。「そうか、この人がいたか」という感じでまさに再発見され、最近の起用につながっているように見える。
筆者は『A Table!』でインタビューさせていただいたが、演じていたヨシヲそのままの、出世とか活躍とかにこだわっていないような、のんびりとしたしゃべりの中にも感性の鋭さを感じさせられた。明治期の作家・国木田独歩の玄孫であり、俳優デビュー作が美輪明宏演出・主演の舞台『黒蜥蜴』という経歴もどこか浮世離れして魅力的で、この人はこれから注目されるだろうなと思ったものだ。やや古風な顔立ちだからこそ、30代になってちょうど魅力と年齢が合致してきたように見える。彼の人柄に興味を持った方はぜひ配信などで『A Table!』を観ていただきたい。
史実では、次郎のモデルになった人物は終戦後、日本に帰還するものの病死しており、『あんぱん』でも、後にのぶと嵩が結ばれることは既定事実。次郎は退場時にはどんな言葉をのぶに残すのか? “次郎ロス”が起こるのは間違いなさそうだ。
だがそんなファンに吉報なのは、7月クールに早速、フジテレビ系のドラマ『愛の、がっこう。』への出演が決まっていること。主演の木村文乃の恋人で、ハイスペックな銀行員を演じる模様。中島目当てでこの番組を観る視聴者も多いに違いない。