ルラ大統領を表敬訪問された佳子さま

国賓として来日したブラジルのルラ大統領夫妻を歓迎する天皇、皇后両陛下(2025年3月25日)写真/宮内庁提供
国賓として来日したブラジルのルラ大統領夫妻を歓迎する天皇、皇后両陛下(2025年3月25日)写真/宮内庁提供
【写真】学生時代の佳子さま、割れた腹筋が見える衣装でダンスを踊ることも

 今年3月25日夜、国賓として来日したブラジルのルラ大統領夫妻を歓迎する宮中晩さん会が、皇居・宮殿の「豊明殿」で開かれた。コロナ禍を経て、宮中晩さん会が開かれるのは約6年ぶりのことだ。

 この連載で紹介しているが、佳子さまと両親の秋篠宮ご夫妻ら皇族方や、それに、プロサッカー選手の三浦知良さんなどブラジルにゆかりのある著名人らも出席した晩さん会で、天皇陛下は前述したような歓迎の挨拶をした。

 離日する前、記者会見したルラ大統領は「これまで何度も日本を訪問しているが、今回が最も重要なものだった」と述べた。さらに、「天皇、皇后両陛下のお時間をいただいた。非常に有意義で私にとって、人としてのぬくもりが感じられる天皇陛下のお言葉の中に本当に心にしみるものがあった」と、語っていた。

 今回の訪問で佳子さまは、ブラジリアの大統領府でルラ大統領を表敬訪問し、再会を果たしている。このとき、佳子さまは「ブラジルの多様な文化、力強い発展、多彩な魅力に接し、改めて尊敬の気持ちを抱いています」と、述べ、訪問先での歓迎に感謝の気持ちを表した。また、「両国の友好親善の一層の増進を願っております」との天皇、皇后両陛下のお言葉を、大統領に伝えた。

 話は前後するが、現地時間5日、サンパウロに到着した佳子さまは、イビラプエラ公園の「開拓先没者慰霊碑」に献花した。翌日、ブラジル日本文化福祉協会を訪れ、子どもたちに大歓声で迎えられ、ハイタッチをして交流した。佳子さまは歓迎行事で、

「私の両親や姉もサンパウロ州を訪れ、皆様に心温まるお迎えをいただいたことを大切な思い出として持ち続けています。日本から移住された方々とそのご子孫が、さまざまな困難に直面しながらも日々努力を重ねてこられたことに、改めて深く敬意を表します。ムイント・オブリガーダ(ありがとうございました)」

 などとスピーチしている。

「ペルー、アルゼンチンおよびブラジルの三国を訪問することとなり、今、出発いたします。これらの諸国はわが国から地理的に最も遠い国々でありますが、早くから多数の日系人が在住し、それぞれの国で大きな役割を果たしていると聞いております。

 私たちは、わが国との関係が深いこれらの国々の実情を見聞し、また、そこに活躍する日系人や在留邦人に接する機会をできるだけ多く持ちたいと思います。このたびの訪問が、これらの諸国との友好親善に、いくらかでも役立つことを心から念願しております」

 以前の連載で触れているが、1967年5月、佳子さまの祖父母である上皇ご夫妻(当時、皇太子ご夫妻)は、昭和天皇の名代として、初めてブラジルを訪れている。ご夫妻はペルーとアルゼンチンを回り、ブラジルに滞在した。羽田空港から日航特別機で出発するに際して、上皇さまは、前述のような要旨の日本国民に向けたお言葉を発表している。

 特に、サンパウロでのご夫妻の歓迎ぶりはすごかったようだ。市内の競技場で歓迎大会が開催されたが、定員が約6万人のところ、8万人を超える人々が詰めかけたという。

《大会場においでになったご夫妻は、まずオープンカーで場内を一周、ゴウゴウと地鳴りのようなどよめきで歓迎は早くも最高潮に達した》

 このように、当時の新聞は伝えている。また、朝日新聞の特派員は次のように南米訪問を振り返った。

《ご夫妻の訪問で、日系人には、それまで遠くにあった日本が、非常に近く感じられたという。とくに、二世、三世にとっては、父母の故国が東洋であると漠然としか思っていなかったものが、目のあたりにご夫妻を見て、強く日本人意識を感じ、また皇室というものの存在を初めて認識した者が多かったようだ》

 これまで、祖父母や両親、姉などが訪れているブラジルは、皇室ととても縁が深い。そうしたブラジルを、今回、初めて訪れてみて、佳子さまは何を感じたのだろう。ぜひ、聞いてみたい気がする。

 たくさんの日系人やブラジルの人たちから大歓迎され、日本人である自分を強く意識したり、内親王としての自分を誇らしく思ったのだろうか。秋篠宮さまも会見で話しているように、外国訪問は、自分や日本という国を見つめ直す、貴重な機会でもある。ブラジル公式訪問で、また佳子さまが成長されたかもしれない。