看護学校時代にも、先輩から厳しい指導があった。

本当に厳しくて、つらくて苦しかったけど、そんな苦しさは女優業でも味わってきました。厳しい先輩もいましたから。いろんな苦しみで私は強くなれたのかも。今の自分なら大概のことには“まかせて”って対応できるかしら。時間はかかっても、じっくりきちんと向き合えば大丈夫だという思いもあります

まだまだこれからの還暦ケアマネ1年生

 例えば現場で“利用者が食事を食べてくれない”といった相談があったとする。

まず“ごはん食べたくない”という人に、私は“食べて”って強要しません。しっかり“なぜ食べたくないのか”を聞き、気分を切り替える対応をすることもあります。時には雰囲気を変えて“そうだ。ちょっと今日ね、私がおみそ汁を作りました。おいしくできたから飲んでほしいな~”なんてお声かけをしたり。もちろん、それでうまくいくこともあれば、いかないこともありますけど

 去年はグループホームでケアマネ業務を行っていた北原さんは、今春から在宅でのケアマネ業務をスタート。

 ホームの中の限定的なケアとは違い、その人の暮らし全般に関わる包括的な支援となる。医師、看護師、ヘルパー、専門職ら多くの地域資源が一丸となり、チームで利用者の生活を支えている。

私は自宅にお住まいの方のケアマネ業務をしたいと思っていました。まだまだこれからの還暦ケアマネ1年生ですよ

 ケアマネジャーは利用者宅を訪問し、どんな日々を過ごしたいかを聞き、具体的な支援に結びつけるのが役割。神経も使う、重要な業務だ。

“明日のことが不安だ”と話される方には、じっくりとお話を聞き“こんな感じにしたら安心ですか”とご提案。足腰に痛みがある方であれば“痛みが取れるまでヘルパーさんにお手伝いしてもらったらどうでしょう”などと、具体的な解決策のプランを立てています

 そんなやりとりで、相手の表情から不安が和らいでいくのを見られることが本当にうれしい、と北原さんは言う。利用者に“北原佐和子だ”などと気づかれた経験は?

ありますよ。“はい、そうです”ってひとしきりお話をして、それから本題に入るようにしています(笑)

 北原さんが仕事で大事にしているのはコミュニケーション。それは女優でも介護でも同じ。気持ちが伝わり、人を笑顔にする瞬間がうれしい。