そもそも介護の現場で大切なのは何か。やはり人と人の関係だと思うんです。“スタッフと利用者”ではなく、人としての信頼関係を構築することが大事。これがコミュニケーションに生かされます。利用者さんとどういう形で信頼関係を構築するかは、常にアンテナを張っている。原点に立ち返ることや横のつながりから学ぶことも多いです

自分の原点に立ち返るため、時間が許す限り伺いたい

 利用者の気持ちよりも、時間や効率を優先せざるをえない介護現場の実態を見てきた北原さんは“利用者の気持ちに寄り添ったケア”や“利用者と信頼関係を築くこと”の大切さをよく知っている。

施設から近い「HONDACarsU-Select八王子」での洗車作業は、メンバーの大きなハリになっている
施設から近い「HONDACarsU-Select八王子」での洗車作業は、メンバーの大きなハリになっている
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 そんな北原さんが自分の原点を見つめ直すため、たびたび訪れる場所がある。地域密着型通所介護事業所『DAYS BLG!はちおうじ』だ。ここでは認知症の症状があるメンバー(と呼ばれる利用者)の自主性を尊重し、働く機会を提供している。

介護福祉士の資格を取って“次はケアマネを取ろう”という時期にBLGに出合いました。BLGは一軒家で家庭的な雰囲気。何より素晴らしいのはスタッフと利用者さんの関係がとてもフラットなこと。自分の原点に立ち返るため、時間が許す限り伺いたい

 BLGの代表・守谷卓也さんとは6年ほど前に全日本認知症ソフトボール大会で知り合い、その取り組みに共鳴。以来、BLGのデイサービスでの取り組み、つまり洗車サービスや草刈りといった作業に同行したり、ランチやミーティングにも参加しているという。

BLGでは仕事内容も利用者とスタッフで話し合って決めています。ランチの店も注文も全員で選ぶし、施設側の都合で何かを押しつけるということがないんですよね

 取材班が訪れた日も、まず朝のミーティングで“今日は何がしたいか”を話し合う。午前中はホンダのディーラーで洗車の仕事をし、全員で決めたファミレスでランチ。もちろんオーダーは各自好きなものをチョイス。

 施設に戻ってコーヒーを飲み、ミーティングで午後の仕事を決める。この日はポスティングの仕事の班とカレーショップ用の玉ねぎを下ごしらえする班に分かれた。BLGでは利用者との“水平な関係”を心がけている、と語ってくれたのは代表の守谷さんだ。

介護する側、される側といった線引きがあってはダメ。ここは認知症であっても“普通に暮らしたい”と思っている人たちが集まるサークルみたいなもの。みんなが同じ気持ちの仲間だから“利用者”でなく“メンバー”と呼ぶんです

 古参メンバーたちと楽しそうにふざける守谷さんを見ていると、サークル仲間という表現がしっくりとくる。

1日の終わりには『振り返り』のミーティングを行うのですが、それがまたいい。その日何をして何を感じたかを振り返る時間で“家にいると奥さんに口うるさく言われる。ここは楽しい”とか、みなさんが心からの素直な気持ちを話してくれる。誰かが“自分はすぐ忘れてしまう”と言えば“私もよ”などと声が上がる。

 つい“私もです!”って参加してしまいました(笑)。利用者さん全員が、そこにいる時間を楽しんでいる。その生き生きとした表情には毎回、魅了されます。BLGは私を原点に戻してくれる大切な場所です」(北原さん)

 もうひとつの本業である女優としては、12月に久しぶりの舞台に立つ。

もう5~6年ぶりの舞台になります。自分も年を重ねた中で、ちゃんと声が出るのか、時代劇なので、所作を忘れていないか、など心配も尽きません。共演の俳優さんも実力のある方ばかりで、すごく緊張しています。ただ、チームでひとつの作品を作りあげる、という作業はとても好きなんですよね