大事なのは“普段からの意識”
メールを見分けるための最も重要なポイントは、メールの冒頭に書かれた宛名をチェックする。
「詐欺でない本物のメール、つまり登録した銀行や証券会社からのメールなら、フルネームで宛名が書いてあるのが普通。姓だけ、あるいは名前だけの場合は詐欺メールを疑ったほうがよいでしょう。自身の名前をアドレスにしていた場合、そこから推測した可能性もあります」
こうしたメールが届いたら、張られたリンクはクリックしないほうが無難。
「詐欺師たちは入会や情報更新などの名目で、氏名や年齢、IDなどの入力を求めてきます。そのデータを使い、後日、宛名をフルネームにした上で、“パスワードが盗まれました。このHPで至急変更してください”と連絡をしてくる。古いパスワードと新しいパスワードを入力させたら、盗んだ古い(正しい)パスワードで銀行や証券会社のHPにログイン。お金を盗み取ってしまうんです」
少しでも不審な点があれば、メールそのものを削除してしまうのが正解。
「どの手口も少額から始め、大口の金額を振り込ませたらその時点で姿をくらます。見ていたHPやLINEアカウントは削除され、以降は電話しても一切つながらない。典型的なポンジスキーム(運用実態のない詐欺的な投資手口)です」
HPやSNS、メールにしても、「私は大丈夫」と思っている人は多い。しかし、引っかかるときは誰しも冷静さを失っている。
「騙された人の話を伺うと、普段ならば騙されそうもない人が、イレギュラーが重なったせいで騙されたというケースがとても多い。例えば、日頃からある証券会社で取引していて、お金を動かしたその直後に、たまたまその証券会社を騙る詐欺メールが到着。何か不具合があったのかとパニックを起こし、引っかかってしまうといったケースです」
そうした状況は起こりうることではあるが、普段からの意識で対応が違ってくる。
「詐欺師たちの手口もレベルアップしており、例えば詐欺HP中の日本語についてもごく自然な言葉づかいや文章になり、洗練されてきています。騙されないようにするためには、どんな手口があるのかを知っておくのはもちろん、金融や経済に関する知識や判断力を養っておくことも必要な時代。普段から金融関連のニュースに触れているだけでも騙しの餌食になる可能性は下がるはずです」

取材・文/千羽ひとみ