「奥様の柏木由紀子さんがご遺体と対面されました。私はそれを遠くから見ていました」
当時のマスコミは正常ではなかった
享年43。しかし悲しみに暮れている暇はない。乗客、乗員計520人が死亡した日本の航空史上最悪の大事故だ。事務所の代表として、マスコミ対応に翻弄された。
「あのときのマスコミは、もう正常ではありませんでした。何しろ大事故だから、取材をして、何かしら書きたいと押し寄せてくるんです。私は奥様やご家族を守らなければいけないし、ほかの悲しんでいらっしゃる遺族の方が御一緒なんですから」
事故から今年でちょうど40年。曲直瀬社長はこの40年、命日には欠かさず墓参りを続けてきたという。今年はまた『上を向いて歩こう』のリリースから65年というアニバーサリーにあたる。
「柏木由紀子さん、ユニバーサルミュージックをはじめ、プロジェクトのみなさんと、この節目に3枚組のベスト盤CD『坂本九』をリリースします。みなさんが覚えているのは、たぶん43歳の九ちゃんですよね。
でも九ちゃんが『上を向いて歩こう』でゴールドディスクを受賞したのは19歳のときで、あの笑顔をフィーチャーしたい。あのときの魅力、パワー、エネルギーをみなさんにお見せしたい。
そして私の人生の終活として、CDのプロジェクトのみなさんと共にしっかり作らないといけない。みなさんの記憶にある大人の九ちゃんとはまた違う、九ちゃんの魅力をお届けできたらと思っています」
取材・文/小野寺悦子