戦犯となる悲劇の市民を描いた
第5位は、C級戦犯として死刑を言い渡された元兵士を中居正広が演じた『私は貝になりたい』(2008年)。1958年にフランキー堺さん主演で最初にテレビドラマが放送され、これまでドラマ、映画で3回リメイクされている。
「戦争の理不尽さがよく伝わる。見ているのもつらかった」(兵庫県・64歳・女性)
「庶民が責任を取らされる悲劇に、戦争の愚かさと悲しさを感じた」(三重県・69歳・男性)などの声が寄せられた。
「大ヒットした『半沢直樹』シリーズや『VIVANT』を手がけ、いまやTBSの大演出家となった福澤克雄さんが監督を務めた作品。2時間ドラマっぽい作りではあるけれど、当時のSMAPでいちばんの演技派である中居さんの好演が光る作品でした」
よしひろさんオススメの、フランキー堺さん主演の映画版(1959年)は現在、動画配信サービスでも視聴可能。ぜひ見比べてみてほしい。
第4位は、日本でもっとも多く読まれた戦争漫画を原作としたアニメ映画『はだしのゲン』(1983年)。漫画家の中沢啓治さんが、広島での被爆体験をもとに執筆を始め、1972年から『別冊少年ジャンプ』(集英社)で連載開始。広島市在住の小学生のゲンが、原爆で父やきょうだいを亡くしながらも母と懸命に生きる姿を描いた物語だ。
「子どものころに見たが、いまだに記憶に残る」(大阪府・58歳・女性)
「一部の人間の私利私欲のため、人々が戦争に巻き込まれていく恐ろしさを描いている。また同じような社会状況になりつつある今、もう一度多くの人に見てほしい」(東京都・64歳・女性)と、子どものころに漫画や映画を見た世代から票が集まった。
「ここ数年、この映画や漫画を排除しようという動きがありますがとんでもないこと。今こそ見てほしい作品です」
長年にわたり、『はだしのゲン』の単行本は全国の学校図書館に置かれ、平和教材としても使用されてきた。だが、2023年には広島市の教育委員会が平和教育副教材から同作を削除。過激な描写が含まれる、反日思想につながりかねないなどの懸念から、多くの学校や自治体の図書館からも姿を消しつつある。
「戦争をやりたい人たち、自衛隊を軍隊にしたいような人たちにとって、戦争の恐ろしさを包み隠さず描いたこの作品は脅威なのです。排除の動きは、その裏返しでしょう。実はこの映画にはパート2もあります。どちらもお子さんと一緒に見てほしいです」

第3位は、いまや日本保守党党首でもある百田尚樹氏の小説を原作とした『永遠の0』(2013年)。第38回日本アカデミー賞では、最優秀作品賞を受賞。主演の岡田准一も最優秀主演男優賞を受賞した。
「特攻隊員を身近に感じられた」(大阪府・66歳・女性)
「三浦春馬の好演が記憶に残る」(千葉県・58歳・男性)などの声が寄せられた。
「申し訳ないけど、私には受け入れがたい作品。映画に罪はないし、むしろキャスティングも映像表現も素晴らしいんだけど、特攻隊員を美化している点に違和感しかない。本来なら、命令した上官が自分で行くべきでしょ」
この作品に票を入れた読者の中にも「映画はいいけど特攻はNG」(沖縄県・58歳・男性)という意見が。
「特攻隊で若い人の命を奪うなんてもってのほか。そもそも戦争は、わかりやすい仮想敵をつくるところから生まれています。今の社会にも通じる部分がありますし、この作品が3位にランクインしたのはちょっと怖いですね」

第2位は、日本、イギリス、オーストラリア、ニュージーランドの合作で、大島渚監督がメガホンをとった『戦場のメリークリスマス』(1983年)。
「ビートたけし、デビッド・ボウイの名演技が記憶に残る」(埼玉県・52歳・女性)
「坂本龍一さん作曲のテーマソングが印象的だった」(東京都・52歳・男性)など、多くの票を得た。
「戦争の悲惨さを直接表現するのではなく、表に出てこない部分を描いた映画だと思います。捕虜へのひどい扱いや人種差別など、この作品ならではのテーマに注目しながら見ていただきたいですね」