腎臓にやさしい食習慣Q&A
腎臓に負担をかけない食事の正解を、上月先生がアンサー。知識を身につけて毎日の食生活から改善!
Q. 外食時のカツ丼と和定食、腎臓をいたわるのはどっち?
A. 「栄養バランスのいい和定食がおすすめ」
「和定食の定番は、ご飯に汁物、タンパク質・脂質のおかずにビタミン・ミネラル・食物繊維などの副菜2品です。一汁三菜は日本の伝統的な食事形式で、どの栄養素も過不足なく摂取できます。一方のカツ丼は、ご飯が多くて味が濃厚。ついご飯を食べすぎてしまいます。味が濃い分、塩分も多く衣も厚いので、脂質のとりすぎに。どうしてもカツ丼が食べたい場合は、薄味で衣を薄くしたものを自分で作るのがベスト」
Q. 食事の順番でおかずよりご飯を先に食べるのはNG?
A. 「副菜の野菜類から食べるのが正解」
「糖質のご飯を先に食べると、血糖値が一気に上がり、高血糖状態が続きます。腎臓の血管はその状態に耐えきれず、損傷し、ろ過機能が低下。結果、腎機能が失われていき、慢性腎臓病が発症しやすくなってしまうんです。さらに血糖値が急激に上がることで、膵臓からインスリンというホルモンが分泌されます。インスリンは、ブドウ糖をエネルギーに変えて身体内で燃やしますが、余ったブドウ糖は脂肪として蓄積され、肥満の原因にもなってしまいます」
Q. 時間がないとき、カップ麺や冷凍ピザでもOK?
A. 「たまに食べるにはいいが、毎日だと問題あり」
「加工食品は高カロリーで、塩分や食品添加物が多く、毎日食べるのはNGですが、たまに食べる分には腎臓への影響も少なく、問題はないでしょう。最近だと高タンパク・低塩分・低糖質のカップ麺や1食でバランスよく栄養を摂取できる“完全メシ”も売られているので、忙しいときにおすすめ。副菜として生野菜や温野菜などのビタミン、ミネラルを一緒にとるとなおいいでしょう」
Q. 果物は皮つき皮むきのどちらで食べるのがいい?
A. 「皮つきで、腎臓病の進行を抑制するポリフェノールを摂取」
「フルーツの皮は食物繊維が豊富で、便通や腸内環境を整える働きがあります。例えば、りんごの皮には腎臓病の進行を抑制するとされる、ポリフェノールが多く含まれています。紫外線や喫煙などにより生成される活性酸素を抑えてくれるほか、血管を広げ、動脈硬化の予防になるとも。目の疲れや視力改善効果が期待できる、アントシアニンも含まれているので、いいことずくめですね」
Q. 野菜多めの食事が腎臓にいいワケは?
A. 「慢性腎臓病の大敵の便秘を解消できるから」
「食べたものは胃腸で消化吸収され、残ったカスが便として排出されますが、便秘になるとカスが有害物質として腸内にとどまります。最近の研究では、慢性腎臓病の患者には便秘の人が多いことがわかっています。お通じをよくするには食物繊維が大切。精製していない穀物や大豆、ゴボウなどを積極的に食べましょう。他にも、キムチに含まれる唐辛子やラー油はお通じをよくするカプサイシンという成分が入っているので、おすすめ」
教えてくれたのは上月正博先生
東北大学名誉教授、山形県立保健医療大学の理事長・学長。夜9時に就寝、2時に起床して仙台から山形までマイカー通勤する生活。医師や一般読者向けの著書多数。世界的に名誉ある「ハンス・セリエメダル」、「日本腎臓財団功労賞」を受賞。
<取材・文/佐久間真弓>