そのままの病状を大げさでなく伝える
がんになると不安はつきもの。周囲の理解も不可欠だ。
「家族や友人、職場の人には病気のことを伝えて、味方になってもらわないと、逆にきついですよ。やはり体調が悪いときには助けてもらったり、仕事の融通を利かせてもらったり、周りのサポートは必要ですから。病気の伝え方は難しいですが、必要以上に心配されたり、不安を与える言い方は避けて、『大変なときは大変と言うから、いつもどおりよろしくね』という感じがいいでしょうね。周りも、腫れもの扱いしないことが大事です」
廣橋先生の場合、身近な人以外に、手術当日に自身のSNSでも公表した。
「公表に踏み切ったのは、緩和ケア医が、がんを体験することで、誰かの役に立つ発見があるだろうと思ったからです。実際、診断から入院までの2か月の間にも、さまざまな気づきがありました」
結果的に公表したことで、温かいコメントがたくさん届いたが、なかにはアンチコメントもあった。
「怪しい治療をすすめてくる人もいましたし、新型コロナウイルスのワクチンのせいでがんになった、という人もいました。でも私は、そういうコメントは一切無視するという対処法で乗り切っています。一般のがん患者さんが、そういった情報に惑わされないためには、正しい情報を知ることが大事です。その情報源として私は、国立がん研究センターの『がん情報サービス』をおすすめしています」
患者に余計なことを言うべきでないのは、身近な人でも同じだ。
「患者側は、真剣によく考えて治療しているわけですから、周囲の人に変なアドバイスはしてほしくないと思います。周囲に求められるのは、アドバイスではなく聞くこと。助けを求められたときに、それに応える関係性です」