歯科医の未来はなぜ明るい?
「今から30年以上前、僕が歯医者になったころは同業者が多く、食えない歯医者もいた。まず、当時は治療のオプションがなかった。例えばインプラントも一般化していなかったし、定期的なメンテナンスなどの予防の概念もあまりなかったし、マウスピース矯正もなかった。あったのは差し歯、金属の入れ歯、歯列矯正程度。逆に今の歯医者の良さはここで、自由診療のメニューが多い。かつ保険診療もできます」
自由診療の種類が多く、ゆえに(医師より)稼ぎやすい。
「僕が歯医者になった当時は歯医者を増やしていた時代。人口に対して歯医者の数が異常に多かった。一般に昔から2000人あたり1医院が適正と言われているんですが、それが2医院とか3医院と過多だった時代があったんですね。国がそれをマズいなと思ったのか、'06年に歯科医師国家試験の合格率が急激に下がった。それまでは80〜90%だったのが、いきなり60〜70%程度になった。歯医者の数を絞っていったということです」
歯科医の数を減らした結果、起こったことは……。
「そうなると私立の歯学部は歯科医師国家試験の合格率を上げるのに躍起になった。出来の悪い学生をどんどん留年させて、成績の良い学生だけを国家試験を受けさせるようにした。それは“留年商法”として週刊誌などでも報じられ、合格率の低さもあり、歯学部に人が集まらなくなった。これは今も続いています」
若者が歯科医を目指さないようになり、歯科医の数は減っていった。
「一方ですでに歯医者になっている人たちはどんどん高齢化している。歯医者のボリュームゾーンは60歳から69歳がいちばん多くて、歯科医全体の24%くらい。50代から上の世代で全体の6割を占めている。そして彼らはこれからどんどん引退していくわけですが、歯医者になろうとする人の数は少ない状況です」
しかしながら、歯科医が勤務する“場所”は多い。
「 “分院”を出すところが増えて、歯科医院は多くなっている。医療法人◯◯会が何軒もクリニックを持っているとか、そういう歯科医院が増えています。そのため求人が増えていますが、人がいない。需給バランスが崩れているのです。歯科医院による歯医者の“奪い合い”が始まっている。どうするかというと、“金”で釣るしかない」