70歳にして初めての試み。自分なりに調べてカメラや照明をそろえたが、撮影したものを確認すると何も映っていない……などの失敗もあった。
1年半で登録者数10万人を達成
「でも、めげずに続けていくとだんだんできるようになるんです。講談社フェーマススクールズのときに、カメラに向かって話しながら指導していたこともあったから、そのときの経験も役に立ちましたね」
ゆるやかながら、チャンネル登録者数は確実に増えていった。
「1000人、1万人、と増え、5万人になったときに、昔の東京スタジアムが満員になるぐらいの人数だなぁとイメージできました。10万人を達成するまでは、1年半ほどでしたね」
その後、アメリカのニュース専門局「CNN」などで紹介されたことで海外の視聴者に認知され、一気に登録者数が増えていった。
「登録者数が100万人を超えると“金の盾”がもらえると知ったとき、それまで自分は絶対に生きていないだろうと思ったんですよ」
普通の鉛筆や、100円ショップの絵の具、引き出しの奥にしまったままの古びたクレヨンなど、身近な画材を使って誰もが絵を楽しめる動画がバズり、いまや登録者数は200万人を超えた。
柴崎先生が描く作品そのものだけでなく、優しい笑顔やおしゃべりに癒される人も多い。
「自分自身も病気を経て、身近な人が亡くなる年齢となり、体力任せに無我夢中で仕事をしていたときのようには動けません。でもYouTubeでは、みなさんにいかに楽しんでもらえるかを考えつつも、実は僕がいちばん楽しくやらせてもらってるんですよ」
そして先生は、読者に向けてこう語る。
「いつからでも、どんな状況からでも新しい一歩は踏み出せます。僕自身、70歳でYouTubeを始め、世界中の人とつながることができました。だからこそ、みなさんにも“まずはやってみる”を合言葉に、年齢や環境にとらわれず、心が動いたらぜひ挑戦してみてほしい。絵も人生も、楽しむことがいちばん大切だと思っています」
取材・文/植木淳子
しばさき・はるみち 水彩画家。“おじいちゃん先生”の愛称で親しまれる。70歳から始めたYouTubeチャンネル「Watercolor by Shibasaki」はチャネル登録者数200万人超えと大人気。