鬱々とした気持ちを打破しようとマスターズ参戦を決意。
「2023年の世界マスターズは地元の鹿児島で開催されたんです。皆で盛り上げたいと思ったのも、出場を決めた理由でした」
練習が楽しくて仕方なかった
当初は参加することを楽しもうと考えていた。
「ですが、恩師に“覚悟を持って絶対金メダルを獲りなさい”と一喝されて。その言葉にハッとして“真剣に挑むマスターズ”に変わりました。懸命に取り組んでいると、周りも動き出してくれて、多くの方から応援をしてもらうようにもなりました」
大会に向けての厳しい練習。現役の感覚を取り戻すことは容易ではなかった。
「最初、足をピッと伸ばすだけで、それはもう“足のつり”との戦い(笑)。でもだんだん身体もできてきて、昨日は30分で足がつったのに、今日は1時間持つようになり、次の日は2時間持つようになり。まさか、自分がここまで動けるようになるとは思ってもいませんでした」
九州での大会ではチーム、ソロ、デュエットの3部門で3つの金メダルを獲得。
「この年齢でこんなに成長できたことがうれしくて、これで終わってはもったいないと考え、続けて大会に出ることにしました」
今年行われたシンガポールでの世界マスターズでは、さらなる進化を実感した。
「2年前でも想定以上にできたと思っていましたが、今はさらに何倍も成長できたと。オリンピックの現役時代より難しい技ができるようになっているんです。若い人たちと組んだり、短い時間の中で集中して練習していることが要因かもしれません。何より、練習が楽しくて仕方なかったことが一番ですね」
連続出場した理由は周囲の反応もある。
「応援の声は本当にアスリートに力を与えてくれるんだと肌で感じられました。演技を見て“美しい”と言ってもらえると、みなさんが“美しい”と思うものをお見せできているんだと、大きな励みになりました」
現在、小谷さんは日本オリンピック委員会常務理事、世界オリンピアンズ協会副会長、日本オリンピアンズ協会会長など、10以上の役職を務めている。
「オリンピアン同士のネットワークづくりを進めていくとともに、オリンピアン一人ひとりの価値を高めていけるよう活動しています。それ以外にも30年以上、子どもたちや婦人クラスなどアーティスティックスイミングの普及活動や指導を行っています」