役者を続ける理由もわからなかった

 修学旅行を経て、甘利田の人生には大きな分岐点が訪れる。14歳のとき、映画『リリイ・シュシュのすべて』('01年)で主演デビューした市原は、来年で25周年を迎える。俳優人生の分岐点を聞いてみると、

「ファンの方からいただいた声です。“ずっとしゃべれなかった子どもと話すきっかけになった”“明日、目の手術を受けるんですが、最後に市原さんの作品を両目で見る”“余命3か月なんですが、病室で市原さんの作品を見ると笑顔になれる”といただいた言葉に涙が止まらなくなって。僕はそれまで人の前に出ることも、しゃべることも苦手でしたし。役者を続ける理由もわからなかったし、芝居の楽しみもまったくわからない人間だったんです」

 その分岐点は、20代前半。ドラマ『WATER BOYS2』('04年)や『ROOKIES』('08年)などを経験する中だったと振り返る。

「役者というものは自分のためではなく、お客様に楽しんでいただくものなんだという根源・本質を知ってから、ガラッと本当に変わりました」

 信じられないくらいの熱量で作品に向き合い続ける市原だけが生み出せるものが、ある─。

動ける甘利田であるために

 普段から身体を鍛えている市原。『おいしい給食』の際には、体重を落としてから撮影に入っているという。

「甘利田は有酸素運動がすごいので(笑)、動きやすいように。変に肉がついてしまうと、甘利田のちょこまかした騒がしい動きができなくなってしまうので。それに、『おいしい給食』はやっていくうちにどんどん体重が落ちていってしまうというのもあります(笑)。大河ドラマ(『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』)と比べると、最終的には10キロ弱くらい絞ってる状態になっていたと思います」

『おいしい給食炎の修学旅行』2025年10月24日(金)新宿ピカデリーほか全国公開。配給:AMGエンタテインメント(C)2025「おいしい給食」製作委員会
『おいしい給食炎の修学旅行』2025年10月24日(金)新宿ピカデリーほか全国公開。配給:AMGエンタテインメント(C)2025「おいしい給食」製作委員会
【写真】上を向く姿も見惚れる市原隼人の全身ショット
撮影/山田智絵 ヘアメイク/大森裕行(VANITES)スタイリング/小野和美